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感想 chappy × 三井啓吾 展「ワレワレモ宇宙人ダ」

  

chappy × 三井啓吾 展「ワレワレモ宇宙人ダ」

 

 

会 期:2022年8月10日(水) - 2022年9月1日(木)

時 間:13時-19時30分 (最終日18時30分終了) 

休 廊:月火金

場 所:Goozen -art and event space-

展覧会URL:

https://www.instagram.com/p/CgmeqB8vETC/

 


 

神奈川県横浜市の弘明寺に2022年4月にオープンしたGoozenさんは、「障害がある人、障害がない人、さまざまな人たちにひらかれた場でありたい」というコンセプトのもと、色々な偶然を企画しているアートギャラリーです。本展「ワレワレモ宇宙人ダ」は、本サイトでも何度か過去の展示をレビューさせていただいた亀戸アートセンターのchappyさんと、滋賀県甲賀市の障害者福祉施設「やまなみ工房」所属作家である三井啓吾さんによる2人展で、異なるバックグラウンドを持ち接点がなかった2人の作品を、Goozenさんが「宇宙人に自らを紹介する地球人」という面白い切り口で結びつけています。

 

 

 

 

chappyさんの作品

 

 

 

 

三井さんの作品

 

 

 

まずchappyさんの作品について。前回レビューしたポタリさんでの展示からまた変化が見られ、より重厚かつ鮮やかな印象を受けました。ブルーがきれい。

 

無題

 

無題


 

無題

 

無題


 

無題

 

無題


 

これには使用画材の変化も関係しているそうです。本展では、河内洋画材料店さんの「BIG OIL PASTEL」を使用して制作された作品も多い、とのこと。「BIG OIL PASTEL」は退色の少ない上質な顔料を多く使用し、かつ、なめらかな描き味を実現する為に可能な限りオイルの含有量を高めたオイルパステルです。実際の作品を観ると「厚み」をとても感じます。

 

芳名帳のそばに置かれた「BIG OIL PASTEL」

手作りで作られる為、すべてが限定色。色はなくなり次第、都度終了となるのだとか。それを使って制作された作品は二度と出せない色味になる。


 

 

chappyさんと言えば「スクラッチ」。「BIG OIL PASTEL」の顔料やオイルの配合量の多さが、スクラッチの新たな表情を演出しているようです。

chappyさんのスクラッチについてはこちら→レビュー chappy  solo exhibition “ BEYOND THE SCRATCH ”

 

 

無題

削った後に見えてくる下の層の微妙な色合いがいいなぁ。

 

無題


 

無題

 

無題

人の顔に見える。


 

無題

これは「夏」をとても感じる。プールとタイルを連想するからかしら。砂浜にも見える。厳密にそのものずばりのモチーフでなくても、chappyさんの作品は、観る人の心に響くイメージに溢れています。

 

無題

色から水面のイメージを受けましたが、作品が直方体のようにも見える形状なのが面白いです。イメージを取り出して閉じ込めたような、人の持つ思い出を形にして取り出した、という感じもします。


 

無題

 

無題


 

 

chappyさんの作品のキーワードとしてもう一つ「線」があります。無数の線の重なりを、私たちは時に「面」と認識したり、線を消した跡も「線」と感じたり。本展では前述の「BIG OIL PASTEL」による「重厚さ」を感じる作品が多かったのですが、その「重さ」の対極にある「軽さ」を感じさせる作品もありました。

 

無題

色彩も、さらっとした「軽さ」の印象も、他の作品と大きく違うはずなのですが、展示に馴染んでいて違和感がない。chappyさんの作品はこのような「線」の重なりで制作されている、ということに意識が向きます。一つのレイヤーを取り出して見せてもらったような感覚。ずっと観ていると形が浮かんでくる。

 

無題

改めて「線」を意識して観る。線の重なりで色や形が変化する。その重なりや組み合わせの妙をじっくり味わえるのがchappyさんの作品。


 

無題


 

「線」の面白さは、chappyさん在廊時にその場で描いてくれる「似ない絵」でも味わえます (500円) 。

「似ない絵」は、chappyさんの展示で恒例で行われているイベント。ユーモア溢れる作風ですが、元から「線」を意識していたchappyさんにとって、現在の作品制作にも通じる原点とも言える活動。

 

カードサイズの作品も豊富にあります。


 

 

 

 

次は三井さんの作品について。「線の重なり」に意識的になってしまうのは三井さんの作品にも言えることかも知れません。実体験を題材に、そこから広がっていくイメージを表現しているとも言える三井さんの作品群。

 

「さかな」

 

「さかな」(部分拡大)

線の描き込みが凄い。


 

「さかな」(部分拡大)

さかなに喰いつく白いもの? のように見える。

 

「さかな」(部分拡大)

文字もたくさん書いてある。


 

上:「ふうせん」 下:「ピンクふうせん」

 

「ふうせん」(部分拡大)

細胞膜で区切られた細胞と細胞、にも見える。


 

「ふうせん」

 

「ふうせん」


 

「ふうせん」(部分拡大)

線の重なりと文字。色んな感情がダイレクトに伝わってくるようです。


 

「ふうせん」

ふうせんだけど、さかな、も連想してしまう。

 

「ふうせん」

色と線の重なりの妙。三井さんが「BIG OIL PASTEL」を使ったらどんな作品になるんだろう、、、。


 

「とり」

 

「とり」(部分拡大)

羽根か卵か。一つ一つ見応えがあります。


 

「とり」

 

「ふうせん」


 

中央:「ギター」 他:無題


 

左奥:「無題 (人の絵)」 右手前:「無題 (動物)」

 

 

 

本展「ワレワレモ宇宙人ダ」のステートメントを下記に引用します。

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"ワレワレハ宇宙人ダ"

宇宙人がそう話しかけてきたら

なんと応えれば良いでしょう。

まずは敵意がないことを示す為にざっと自己紹介でしょうか。

ええっと私は地球という星の日本の横浜に住む男の女の・・職業は・・血液型は・・

そんなこの星での属性はあまり意味をなさないかもしれません。

"ワレワレモ宇宙人ダ"

2人の絵画はそう応えているようです。

じゆうや不じ由や曲線や色彩ノソウや微妙な味ワイ。

ワ・カ・ル・ヨ。

"ワレワレは皆、宇宙人ダ"

 

(Goozen -art and event space- インスタグラム より)

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なるほど。全く異なるバックグラウンドを持つ2人の作家の作品から、共通する様な「線」を見出したり、無限のイメージを感じ取ったり、と、別の銀河に住む宇宙人にも伝わるものがある、と思えてきます。

 

 

 

会場の中央には宇宙に関する面白い書籍やDVDが。

宇宙人のイメージが三井さんの描くふうせんと重なる、、、。あ、クレクレタコラは宇宙人じゃなくてタコか、、、。


 

「やまなみ工房グッズダ」


 

 

 

Goozenさんが選んでかけているレコードにもどことなく宇宙を感じ、興味深かったです。宇宙人に自己紹介する時、どうしようかな、、、。chappyさんと三井さんの身体の動きを感じさせる作品群なら、地球という星に生きている人間という種族もダイレクトに伝わるかな、そんなことを考えたりもしました。ぜひ、足を運んでみてください。

 

 

 

 

展示風景画像:chappy × 三井啓吾 展「ワレワレモ宇宙人ダ」


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