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【おすすめ アート本】読了しなくてもいい? 用語辞典になる本 5選

現代アートはハイコンテクストだ!

 

現代美術、現代アートはハイコンテクストだ! という話を聞いたことがありますか? または実感したことは? 私はしょっちゅうです。ちょっと興味がある展覧会を観に行って、長い解説文やステートメントを読んで、解説の中にもいまいち分からない言葉があって、なんとなく理解した気になって終わる、という経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

この「いまいち分からない言葉」が理解できている前提 = ハイコンテクスト ということですね。

 

では、その理解できている前提をちゃんと理解してから行こう! となった方。素晴らしいですー! 鑑賞者の鑑 (かがみ) ですね! 分からないことがそのままになっていると気持ち悪い、ということで、近現代の美術史を解説している数多の書籍から選び出して読み始めた貴方。1ページ読み進めるのに、またちょっと分からない言葉が出現して、なかなか先に進めず、、、積読 (つんどく = 買った本を読むことなく積んだままにしている状態を言う) コーナーへ。忘れた頃にまた気になる展覧会があって行ってみると解説文の中に一度は見たことある言葉が出てきて、、、あー、読んだ、読んだけど、これかー、これがそうなのかー、ふむふむ、うん、なるほど (なんとなく) 分かった。説明? えーと、あれがあれで、なんとなくこういう感じで、まぁ、そういうことです (その後永遠ループ) 。

 

これが現代美術やアートに苦手意識を持つ原因になっている可能性、大アリです。

 

 

必要なのは自分に合う用語辞典だった。

 

私は読書のスピードがとても遅く、一度読んだ内容をことごとく忘れるのが特技です。最悪ですね。展覧会の感想などを書いている割には適性がないんじゃないか? という疑問が浮上してきます。でも大丈夫! 実は書きながら色々な本を読み直しています。いやいや、近現代だからって侮るなかれ、この100年余りの間に美術に何が起きたか、全部を覚えているのは至難の業です。いろいろ複雑になり過ぎました。複雑になった理由としては、今まで見過ごされていた地域の芸術的要素が含まれて来たり、芸術が担う役割の多様化、扱う範囲の拡がりなどが挙げられそうです。現在のインターネットによる情報の伝達の速さもあって、今後はより多様化が進むと考えられます。近現代 (1900年〜) を扱ったマストハブな1冊『ART SINCE 1900:図鑑 1900年以後の芸術』の厚さ、ご存じですか? えーっとですね、5.5cm!

 

この帯、大袈裟じゃなく、本当に日本語版が待望されていたんですよ、というくらいバイブル的な本。


購入した当時、はしゃいで厚さを測り、SNSにあげていました。


 

何が言いたいかというと、特殊な記憶力がある方でなければ、この100年余りの美術の歴史ですら簡単には頭の中に入れられないということです。必要なのは、思い出すことではなく、簡単に引ける用語辞典。それも、前後の流れが分かったり、同年代の違う地域への言及があったり、視覚的に分かりやすかったり、と、引いた言葉の意味だけ分かって終わり! ではなく、複雑に絡み合った美術史のニューロンを繋げるべく樹状突起が出ているものがいいですね。ある時、突然パズルのピースがはまったー! となったら、本当に理解できたと実感できて最高じゃないですか?

 

 

 

読書が苦手な私による、用語辞典として使用しているおすすめ本

 

読むスピードが絶望的に遅く、内容もすっかり忘れてしまう私が、持っててよかったーと高頻度で引き直している私的美術用語辞典をご紹介します。用語辞典として発売されていなくても、そのような使い方が出来る、という本も含まれます。要は、読了していなくても、知りたい用語や時代のページにアクセスしやすい、ということです。便利!

 

 

 

圧倒的ストレスフリー! イラストで記憶に定着しやすい。


 

初めの1冊としておすすめなのは、筧菜奈子さんが文とイラストを担当されている『めくるめく現代アート』です。目次は、アーティスト編、キーワード編、と大きく2つに分かれており、名前と作品がすぐに一致しない、という場合でも心配ご無用! とてもよく似ている作品イラストが掲載されており、著作権の問題で作品の図像が載せられないという現代アート本の辛いところを補ってくれています。作家の似顔絵も載っているのでなんとなく人柄を想像しやすいのもいいです。キーワード編にもふんだんにイラストが使われており、コラムも会話形式のブログのようで読みやすい! 初めて現代アートの本を買うという方にもおすすめですが、ある程度知識があるよーという方にとっても、記憶が曖昧になっている部分を軽く確認したい時に持っていると便利な一冊です。

 

 

 

俺たちの美術手帖! さすがだぜ!


 

『美術手帖』と言えば、日本における美術専門誌として最も知名度があるメディアと言っても過言ではないでしょう。 2022年4月号からの季刊化が話題になったりもしました。現在進行形の話題に強く、この『これからの美術がわかるキーワード100』も2010年前後から浮上してきた概念や動向を取り上げて解説しています。例として「思弁的実在論」についての項などはインターネットで調べるよりも簡潔な概要が初めに説明されていて、分かりやすい。いやー、美術の話って美学の関係で哲学の領域までと、本当に守備範囲が広いですね、、、。現代において展覧会を開いている現役の若手作家さんの思想を知る際にも、必要となってくる一冊と思います。

 

 

 

10年ごとの展望がまとめられている! だいたい見開き2頁で収められた用語説明!


 

海野弘さんによる1900年から2010年までの美術史の振り返り。私が当サイトで感覚的に行なっている音楽ジャンル分けとは比べてはいけないレベルですが、サンドロ・ボコラによる4つの座標 (リアリスティック / ストラクチュラル / ロマンティック / シンボリスト) が冒頭で紹介されていて、二十世紀に興った様々な動向を東西南北のような方向に当てはめることで分かりやすくしています。本編は10年毎の「展望」で流れが説明され、各アートの動向もほぼ見開き2頁で収められていて読みやすい。巻末の索引は人名と事項に分かれていて、流れを把握する読み物としても、用語辞典としても両方活用できます。

 

 

 

当時の歴史や世俗的な視点はアートと切っても切り離せない!


 

以前の記事で個別におすすめ済みの三田晴夫さんの『教養としての近現代美術史』です。索引はないので、用語辞典として使用する際は目次から該当章を読む形になりますが、時に世界の歴史や当時の風俗、作家の人生にまで簡潔に言及しつつ読みやすい文章は、用語だけの理解に留まらず、なぜこの時代にこの動向が起こったのかという深い理解に導く良書と思います。ここでご紹介した他の書籍と併せて読むのがおすすめです。霞を食うような印象の美術であっても、その歴史は生身の人間が作るものだ、ということに気付かせてくれます。

※惜しいことに記述の誤りがいくつかある、とAmazonのレビューで指摘されているので、事実確認のためにも複数の書籍を参照することをおすすめします。

 

 

 

和訳でも難解。重い。1万円超え。それでも持っておきたい。バイブル。


 

『オクトーバー』派。聞いたことある方もいると思います。『October』はアメリカの MIT Press (マサチューセッツ工科大学出版局) が出版する季刊美術理論誌です。芸術批評の最前線を自負し、その著者は『オクトーバー』派と呼ばれたりします。その中心的人物である5人の著者による渾身の『1900年以後の芸術』史、がこちらです。イタリア語、スペイン語、ギリシア語、韓国語などに翻訳され、反響も大きかった書籍なのですが、日本語訳にしても難しい単語が多く、本を持ちながら読んでいるとと腕が痛くなるという、電車の中で隙間時間に読むなんてことは絶対したくない仕様になっています。すごい勢いでディスってる風に聞こえますが、そんなデメリットを排するほどの価値があるとも思っています。こちらは主に年別になっていて時系列で出来事を追えます。マティスがロダンのアトリエを訪ねていた (にも関わらずロダンの制作方法を見て反発を覚える) とか、ピカソの「アヴィニヨンの娘たち」は初めは評価が低くルーブルが遺贈を断っていた話などは本書の初めのほうに載っているエピソードですが、世界中で反響のあった書籍のエピソードにしては他のメディアによる詳細な情報や考察が、日本語ではすぐに見つけられなかったりもして、やはり一読しておく価値がある書籍だなぁと思ったりします。2015年までが掲載されています。

 

 

 

まとめ

 

入門書的なものから、所有するにはちょっと尻込みするような大型本までご紹介しましたが、言えることは読了など目指さずに、必要な時のつまみ読みが意外に役立つということです。図書館で借りるとこれができないのが辛いところです、、、。積読にして背表紙だけ見せるのも悪くない!? 本屋さんで見かけたらぜひ試し読みしてみてください。

 


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