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感想 工房イサド 個展「イサド式。」

 

工房イサド 個展「イサド式。」

 

会 期:2022年6月2日(木) - 2022年6月13日(月)

時 間:12時-19時

休 廊:火水 

場 所:URESICA

展覧会URL:

https://www.instagram.com/p/CeSAXLgPtJI/?hl=ja


 

過去の記事「【アートの飾り方】ドローイング作品を購入したらどう飾る?」で、全国額縁組合連合会認定フレーマーの資格を持ってます、ということを書きました。作品て額によって見え方が全然変わってくるので、面白いなぁと思います。

 

私が携わっていたのは持ち込まれた作品に合わせて、適切な耐久性と、お部屋の雰囲気や要望に合わせたデザインを選んでオーダーをする仕事で、内部の加工などは行なっていましたが (内部の加工も作品によって難易度が変わって奥深いです)、額縁そのものを作るということはしていません。画材屋の額装コーナーなどを通すと、額縁そのもののデザインは海外や国内の額メーカーの既製品からの選択になりますが、個人で額縁を制作されている方ももちろんいらっしゃいます。前述のように、作品を家に飾る際にどんな額にするかで印象がかなり左右され、額縁が芸術として見做されることもあります。建築装飾画家として出発し、20代で金十字勲章や皇帝賞を受賞していたグスタフ・クリムトは、早くから額縁のデザインを自ら手掛けていました。

 

工房イサドさん (本田淳さん) は、株式会社パルコの宣伝部、販売促進部などの勤務を経て、木工を志し、都立品川職業技術専門校木工科に入学、特注家具製作を主とする(有)木工房シンに勤務後、独立されました。会社員時代から独学で木工制作を開始していたため、20年以上、額を作っているそうです。

 

イサドさんの作品の特徴は古材や廃材を用いて制作されていることです。きっかけは、取り壊し予定の古い家屋の建具を仕入れる機会があったことから。オーダーを受けてから額を制作することもありましたが、どちらかというと見つかった素材のイメージに合わせて先に作るのが性に合っている、とおっしゃっていました。額が先、で中に入れる作品を作家さんが後から制作する、というパターンもあったのだとか。

 

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完成が予想できちゃうと、つくれることはつくれるけど、たぶん熱量は低いですよね。それから、こういうのが欲しい人もいるだろうな、という感じでこちらからすり寄っていくような作品というのは、実際はあんまり動きません。そうではなくて、いい素材を見つけてきて、夢中になって額にして、おもしろいものができたー!っていう作品は、展示会なんかでもやっぱり真っ先に売れていきます。そういう熱って、お客さんには不思議なほどに伝わっちゃうものなんですよね。

 

(photopicnic「作家インタビューシリーズ1 ものづくりのこと ~工房イサドの場合~」 より抜粋)

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額の中にあるのは、工房名の由来となった宮沢賢治「やまなし」の一説。

古い折れ尺をはめ込んだこちらのシリーズは人気。初日でほぼ完売でした。折れ尺をピッタリはめ込んでいる縁部分の技術が見られます。


額以外の木工作品もあります。

 


額縁自体に魅力があるので、ミラー仕様も選べます (オプション) 。

 

うわー。この額についている引き戸の鍵、生家にあった! 懐かしい! 「ネジ締り錠」と言うらしいです。

 





額の中の額。こうやって見ると額が作品になっている感じが伝わる。額縁に入れることで明確に作品となる額縁、って何か示唆的です。中の額は「技術」や「見た目」がクローズアップされて作品となり、外の額は「機能」とか「実用」という文脈が強調されているということなんだろうか? こちらの中の額の中身も変更可能になっているそうです。中の額もちゃんと役割を果たす。

 

会場内にあるステートメント。入れられている額の木材の肌合いも、深い味わいがあります。

 

 

古材の魅力や木工の技術、ということだけには留まらない熱を感じるイサドさんの作品。自身が形を考案したオリジナルのシリーズもありました。




 

会場の下、URESICAさんの1階部分にも作品が展示されています。絶妙な感覚で選ばれた木目の美しい部分を使用して制作されたカッティングボードも。


 

部屋に作品を飾る際に無視できない額縁について、元から興味があったため伺ったのですが、SNSで本展の画像を見た時から額縁自体の魅力に惹きつけられた部分も大いにあります。イサドさんの額に他の作家の作品は入れづらそう、作品と作品のオーラのぶつかり合いになっちゃいそう、とも感じました(ポストカードやポスターならいいかも)。この場合の額縁の魅力は、立体作品としての魅力になるのか? 額縁は作品の保護ができればいい、という機能面だけで選ぶ? しかし、額縁の見た目は何でもいいとは言い切れません。では、突出した魅力のある額縁はどう捉えたらよいのか?

 

 

突き詰めると何をもって作品とするのか、実用的なものは作品ではなくデザインなのか、用途を無視して飾るだけに留め、鑑賞を楽しんだら作品になるのか、という様々な疑問にまで発展しそうですが、すぐに答えが出そうもない難しい問いは置いておいて、イサドさんの作品から発せられる古材への愛と技術、熱量が、直感的に「いいな!」と感じられた展覧会でした。ぜひ、足を運んでみてください。

 

 

 

展示風景画像:工房イサド 個展「イサド式。」


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