ドローイング作品、紙に描かれた作品は飾りづらい?
アート、買ってますか?
雑な始まり方ですみません。このサイトを始めて2ヶ月目の現在、まだまだ始まったばかりですが、それでもいろいろな展覧会に伺わせていただき、自分のコレクションが着実に増えております。いやぁー、そうなりますよね、観ちゃうと。素敵な作品ばかりなんだもの。
中でも、ドローイングの作品、紙に描かれた作品が増えた気がします。さらっと描かれた良さがあったり、作家さんの息づかいを感じられたり。また、初心者が買いやすい作品であることも事実です。買いやすいというのはお値段のことだけではありません。飾る場所を考慮したときのサイズ感、配送がコンパクトで済む、などの理由も含みます。
でもちょっと待ってください。紙の作品は、上記のような購入時のメリットがありますが、いざ飾るとなるとベストな状態で飾るのが意外に難しいのです。ゆえに額装込みで販売されている作品もありますが、そうでない場合、または額を自分で選びたい場合はどうするのがよいでしょうか?
額屋さんや作品を購入したギャラリーに相談するのがベストですが、全国額縁組合連合会認定フレーマーの資格を持ち、過去にフレーマーとして某画材屋さんで勤務していたことのある私が、簡単かつ比較的作品に優しい飾り方をお伝えしたいと思います。
全国額縁組合連合会認定フレーマー資格って何?
取得時点で全国2,000人程度しかいないマイナー資格。テキストもあり難易度は低いです。でも全く独学で取得するのはちょっと難しいかも。費用もお高めなので、実務されている方しか取得しないと思います。
費用面がネックになって、この資格を持っていないフレーマーさんも多いと思いますが、ほぼ同等の知識がありますので安心して額屋さんに相談しましょう。この資格、もっと安くして難易度を上げるとかしてもいいのに。
実践 : 額に入れる意味、額の役割
額屋さんにお願いした場合、マットという1mm〜3mm程度の厚みの専用紙をカットしたものに裏から額装用テープで固定する方法を提案されると思います。額装用のマットやテープは無酸性(アシッドフリー)のものが使用されています。
注:なぜ無酸性(アシッドフリー)かといいますと、酸性のものだと経年で黄ばみや茶色いシミなどが発生し(昔のセロハンテープが茶色く変色してカピカピになって剥がれているのをイメージしていただければ)、作品に悪影響を与える可能性があるからです。
マットは、見た目やデザインを良くするもの、既製額のサイズに作品を合わせるためのものと思われがちで、もちろんそれらの役割もあるんですが、一番は、作品がガラスやアクリル板に直接触れないようにするためのものなのです。
え? じゃあ、ガラスやアクリル板がなければいいんじゃないの? という疑問があるかもしれませんが、作品保護の観点から、カバーは必要です。液体の飛沫からの保護、物理的衝撃からの保護、アクリル板の場合ですとUVカットの効果もありますから退色の防止にも繋がります。この点、油絵具やアクリル絵具で描かれたキャンバス作品は表面や支持体が強固なため、カバーの必要がなくて扱いやすいというメリットがあります。
額装は、
・作品には、できる限り異物が触れないようにする。
・作品に触れるものは無酸性(アシッドフリー)のものにする。
というのが基本です。市販のマスキングテープじゃダメという理由がコレです。本人が納得されていれば、アクリル板に触れても、マスキングテープで貼っても、虫ピンで留めても、何をしてもよいのですが、大切な作品であれば上記を頭に入れておくとよいでしょう。
虫ピンで留めるやり方です。作品ではなく、キャプションの展示方法としてよく見られます。
余談ですが、たとえ無酸性テープでも作品に直接テープを貼りたくない場合、コーナー留めなども選べます。無酸紙でつくられた三角コーナーで四隅を裏から固定するやり方です。詳しくは額屋さんに訊いてみましょう。
マットって何?
こちらの白い厚紙がマットです。デッサン額と呼ばれる額にはもともと付属していたりします。フォトフレームなどにも付いていますね。額屋さんでは様々な色のものが用意されていて作品に合わせてカットしてくれます。
このマットマウントの方法はオーソドックスで、一番作品に優しいのですが
・作品の端が数ミリ隠れてしまって印象が変わる
・仰々しい雰囲気になり、ラフな作品と合わない
等の理由から、浮かし加工の方法で額装を希望される方もいます。浮かし加工について詳しい説明は省略しますが、端まで作品を見せられる反面、
・薄すぎて透けるような作品には向かない
・何かしらパネルに作品をマウントしなければならないので作品が異物に触れる面積が増える
・パネルから剥がすなどの原状復帰が難しい
・額の内部にパネル分の深さが必要となり料金がかかる
などのデメリットがあります。
新提案 : マグネットマウント
えー、やっと本題ですが、自宅で簡単にでき、かつ、異物の触れる面積が少なく原状復帰が簡単なマグネットマウント法が以下です。
用意するもの
・デッサン額
(木の風合いを活かすなら裏板が木製かMDFのもの。紙の質感や色が欲しい場合は中抜きなしのマットを別途用意)
注:ポスターパネルはやめましょう。薄すぎるのと、カバーが塩ビ板で日焼けしやすいためです。
・画鋲
(マグネットを使用するので頭の部分が平らなもの、かつ、磁石が効くもの)
・強力マグネット
(表に見えるので小さいものがよい。作品の紙の厚さにもよるが強力なものがよい)
・その他ニッパーなど
です。
今回は裏板の木の風合いを活かしたバージョンでご説明します。
①デッサン額付属の裏板に、作品の四隅からはみ出ない位置に画鋲を刺します。
横に作品を置きながら刺す位置を決めると楽です。画鋲は表から見えないので水平・垂直の位置から多少ずれても問題ありません。
台紙として中抜きなしのマットを用意した場合はマットに直接画鋲を刺してください。
画鋲の位置が決まったら、裏に出ている画鋲の針の先をニッパーでカットし、額に収まるようにしましょう。
②作品を置き、四隅を強力マグネットで留める。
画像は高松明日香さんの作品です。
強力マグネットは画像のものより小さいものも売っていますのでお好みでどうぞ。
③額にセットして完成。
額の中に入っていたダンボールや発泡スチロールが、裏の一番外側になるようにしてます。
このマグネットマウント法だと、画鋲やマグネットの厚みで裏板やアクリル板との間に隙間ができ、作品がそれらと直接触れないようにできます。
えー、ここでもし、
画鋲の頭の部分とマグネットは作品に触れてるけどいいの?
と疑問に思われた方、鋭いです。フレーマーの素質があります。
このマグネットマウント法の欠点はそこです。もし画鋲やマグネットが錆びたら作品を汚してしまいます。了承の上で実践していただくか、画鋲やマグネットの、作品に触れる部分を無酸性テープでカバーするなどしてから行えば完璧です。
また、触れていないとはいえ、裏板の木材からヤニが出てきてしまうことも考えられます。心配な場合はフィキサチーフを裏板にかけてから行うとよいでしょう。
また磁力の関係で時計や精密機械などの近くには飾らない方がよいです。
以上が、簡単かつ比較的作品に優しいドローイング作品の額装方法でした。参考にしていただければ幸いです。
関連記事
関連商品リンク
コメントをお書きください