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感想 西雄大 個展「FOLK」

 

西雄大 個展「FOLK」

 

会 期:2021年12月4日(土) - 12月19日(日)

時 間:15時-20時

休 廊:月火

場 所:LAID BUG

展覧会URL:

https://laidbug.com/

 


 

こちらの展示は、設営の様子をインスタグラムで拝見したのがきっかけで興味を持ちました。水墨画とも淡彩とも違う、統一された色調の力強い絵が、レコードのディスプレイラックのような木製の什器にずらりと並べられている景色が圧巻で、早速観に行ってきました。

 







 

西雄大さんは1991年生まれ、京都精華大学デザイン学部卒業。2014年頃から多くのグループ展や個展で作品を発表されています。鮮やかな色面とはっきりとしたアウトラインによって特徴づけられる作品を知る方も多いのではないでしょうか。昨年2020年にLAID BUGさんで行われた個展「PRE SCHOOL」では、発想やアイデアの過程が感じられるドローイング/コラージュブックなど、作品制作における根源的な欲求にフォーカスした展示が催され、本展「FOLK」では、その「PRE SCHOOL」展をきっかけに取り組まれた、よりラフで直感的な絵画表現を洗練させた作品群が展示されております。

 

こちらは「PRE SCHOOL」展で発売されたアートブック『MIX TAPE』。300ページにわたりスクラップブックの内容が収められています。

本展「FOLK」にてリリースされたアートブック『PKCN』(ぽくちん)。アイデアがよりシンプルに洗練された形になっています。


『PKCN』(ぽくちん) チラ見せ。

作品と見比べてみるとまた面白い。


 

作品は1点づつ販売されており、購入した場合は額装して発送とのこと。会場には額装された作品もありました。

 


額に入るとまた見え方が違いますね。


 

レコードディスプレイのような展示を可能にした木の什器は西さんご本人作。上下左右の隣りあった作品の組み合わせやその数に圧倒されて、什器込みで作品を観てしまいがちでしたが、それぞれ1つ1つの作品も、余白の取り方や端まで続く水彩の滲み、紙の重なりなど、画面としての完成度の高さが窺えます。

 

額装された作品の部分拡大。端まで続く滲み、紙の重なりが確認できます。これがまたいい味を出していて、作品の重要な要素です。

垂れた絵の具が紙の端に沿って横に流れています。これも重要ですね。


全体で捉えると、一見、白い背景という印象の作品も、、、

注目して観ると、紙の貼り合わせによる白の濃淡が。この余白の、レイアウトとマチエールのバランスは見応えがあります。この作品好きだな。


 

気になる作品があれば、スタッフの方にお声がけしてディスプレイから取り出して見せてもらうことも可能です。端まで観て改めて気づく要素も多いと思います。

 

作品を1点1点じっくり観てみると、普段見慣れている身近なものにも新しい発見があるという示唆に富んでいました。

 



 

各作品には鉛筆のようなものを使った下描きは見られません。太い線で描かれたアウトラインという西さんの作品の特徴はあっても、線の濃淡や勢い、滲みなどから、描いた時のライブ感が新たな魅力として伝わってきます。

 

最近思うのは、私たちが絵画から感じる魅力を構成する要素には、構図や色、物質という目に見えるものだけではなく、制作時にかけられた重さや時間という別次元の要素まで含まれるのではないかということです。重さについてはchappyさんの展示で気づかせていただき、時間に関しては以前より感じていたことでした。制作時間は長ければ良い等の尺度があるのではなく、積み重ねた鍛錬に裏付けされた、瞬間に表れる魅力というものもあります。練習を重ねたアスリートが本番で見せる技のような、ミュージシャンがライブで行う即興演奏のような、そういったものに喩えられる魅力です。前述の『MIX TAPE』や『PKCN』 で見られる、身近なものから感じインプットしたものを自分の表現としてアウトプットしていくことの積み重ねが、本展の西さんの作品の、ラフで直感的かつ魅力的な表現を叶えているのだと思います。

 

レコードショップでジャケ買いをするように楽しみながらじっくり選ぶように観ていくと、個人的な好みは本当に人それぞれで、来場されていた他の方の会話にも耳を傾けたくなる面白さがありました。ライブ感を感じに、ぜひ足を運んでみてください。

 

展示風景画像:西雄大 個展「FOLK」


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