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感想 寿司みどり 個展「人間」

 

寿司みどり 個展「人間」

 

会 期:2022年5月31日(火) - 2022年6月12日(日)

時 間:11時-20時

休 廊:会期中無休 

場 所:Room_412

展覧会URL:

https://www.instagram.com/p/Cdp6_t4BiER/


 

個展タイトルは「人間」。メインのビジュアルやSNSで流れてくる情報からは肺に見えたり、顔が見えたり、おっぱいに見えたりするけれども「人間」と即座に答えられないような作品画像が確認できる。うーん、めっちゃ好きなタイプの作品です。

 

寿司みどりさんは1987年生まれ、2011年東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業。「新しく普遍的な実感がある絵画を描く事を目的として (寿司みどり ウェブサイト ABOUT より) 」作品制作をされています。

 

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私は実感がありながらも驚かされる要素が含まれているものを見たいと思っています。実感と新しさが共存している絵画を目指して作成し、その要素を際立たせる展示を考えました。

 

本展示では人間の体のしくみと生存についての絵画を集めます。

(展覧会DM掲載ステートメントより全文)

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「実感」というワードがとても気になりました。パッと見て、自分が惹かれる理由を言語化できないまま、タイトル「人間」と、上記ステートメントと、人体の器官のように見えてくる作品と、を結びつけることが可能だったとしても、空想の域を出ないとしらけてしまうものなのですが、寿司さんの作品には作為や理屈を感じませんでした。それが、一鑑賞者である私にも「実感」が持てた、ということなのか。平たく言うと「何が描かれているのか、他人に説明できないけど、表面的じゃなくて、惹かれる」ってことなんですけどね。

エアコンから吐き出される風が肺から吐き出される息のようにも思えました。

 

入ってすぐの部屋には形が人間と認識できる作品が多いです。

 

「人間」

これが一番「人間」を認識できそうな作品ではあるけど、、、。

 

「人間」(部分拡大)

解剖図のようにも、象形の過程のようにも見える。

 

「人間」(部分拡大)

煤っぽい表現の肺の辺り。


 

「人間」(部分拡大)

性器の辺りが光っていて、いきなりの足。

 

「人間」(部分拡大)

精子的なものがいた。


 

「人間」(部分拡大)

左右にある波打った縁。この画面自体が血管の中のようにも見えます。


 

「人間」

 

「人間」


人っぽい形が見えますが、、、。横から見てみると、側面に色がついていたり、絵肌が層のように作り込まれていたり。正面から見て描かれている形は、見えている「外側」という印象を受けました。色がないのも意味がありそうですね。

 

 

「人間」(別角度より撮影)

 

「人間」(別角度より撮影)


 

「人間」(別角度より撮影)

 

「人間」(別角度より撮影)


 

これらを踏まえてからのー

 

 

「人間」

 

「人間」


花とか言ってもよさそうなのに、マクロファージに見えてくるから不思議。「人間」というタイトルにもなぜか納得してしまう不思議。

 

 

奥の展示スペースへ。

 

 

 

まずこの置かれてる作品に目がいってしまう。

 

「人間」

 

「人間」(別角度より撮影)


作品の天地も不明です! そこがいいなと思いました。

 

 

「人間」

私には、これは肺や胸部に見えました。

 

「人間」

これはお腹、、、? 滲みが血液にも感じます。


 

「人間」

腸、、、?

 

「人間」(部分拡大)

よく見ると色々描かれている。


 

やばい。一番初めに見た作品に出てきた記号のようなものと照らし合わせて位置を確認したい!

 

しかし、ステートメントに「人間の体のしくみ」とはあるものの、これらが人間の内部の器官であるという確証はなく、タイトルは飽くまで「人間」なのだから個別の人間を表しているのではないか、という見方も浮上してきました。

 

メランコリーなど、現代でも使用されている単語の語源となった四気質 (体液の過少と人の気質には関係があるとする説に基づく分類。多血質、粘液質、黄胆汁質、黒胆汁質) なども脳裏に浮かびます。赤い色が多めの作品は多血質な人間ーーヒポクラテスによると、多血質は「快活、楽天的、社交的で、気が変わりやすい (デジタル大辞泉 より)」ーーそんな人間を表しているのかも。色のイメージだけではなく、画面から感じられる体液の質感が存在します。四気質は、科学的根拠を欠いていて現代では支持されていませんが、体液のように循環するもので、東洋医学の「気・血・水」という考えもありますし、どこか普遍的な「体液の性質」と「気質」の直感的イメージがあるのかも知れません。

 

2021年10月に開催された「3331 ART FAIR 2021」に出品した作品について、寿司さんは

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何らかの理由で言動を抑制せざるを得ない人間の希望や反抗の意味が強いものを4点選びました✨

その結果めちゃギュッとしていますが笑、是非ご高覧いただければ幸いです🙇

 

(寿司みどり Twitter より)

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とも発言されており、本展の作品も何らかの心情、状態、気質のようなものが表現されている可能性はありそうです。

 

「人間」

黄色を黄胆汁質とみると「激情的で怒りっぽく攻撃的 (デジタル大辞泉 より)」。

 

「人間」

受ける印象は粘液質かなぁ。「感情の起伏が少なく、粘り強い (デジタル大辞泉 より)」。


 

「人間」

多血の中に黒胆汁が見える。黒胆汁質「心配性で陰気な気質。憂鬱質 (デジタル大辞泉 より)」。

 

「人間」

バランスよく見えますね。楽しそう。


 

 

妙な「実感」を伴って「人間」を受け入れてしまう説得力がある作品群です。言葉にできないぐちゃっとした感情はこういう形をしているのかな。

 

会場の雰囲気も相まって、入口から奥に進むにつれて、人体の内部や、自分が認識できていない内側まで潜っていけるような展示でした。ぜひ、足を運んで体験してみてください。

 

 

展示風景画像:寿司みどり 個展「人間」


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