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感想 益永梢子 個展「replace」

 

益永梢子 個展「replace」

 

会 期:2021年11月12日(金) - 12月12日(日) 

時 間:水-土 11時-19時  日 12時-18時 

休 廊:月火祝

場 所:LOKO GALLERY

展覧会URL:

https://lokogallery.com/archives/exhibitions/replace

 


 

冒頭から別の展示の話で失礼しますが、益永梢子さんは、2020年12月12日(土) から2021年5月29日(土)まで、都内某所で開催されていた「FACE UP」というグループ展に参加されていました。開催場所は、会期が終了しても明言されないまま、作家のCVにも都内某所と記載があるのみで、遭遇した鑑賞者が写した画像に若干映り込んでいる商品、監視カメラ、扉などの情報から、馴染みのある24時間営業のお店かな、という程度しか把握できません。参加作家は、内山聡、大槻英世、川崎昭、タナカヤスオ、益永梢子、光藤雄介。某所という理由は展覧会を行う許可を得ていない店舗を展示会場としていたため、ということですが、履歴上も某所であり続けることも展覧会の趣旨だったのでは、と感じます。

 

本展「replace」のステートメントにもあるように益永さんは、作品がおかれる環境・スペースとの関係性から思考をはじめ、作品制作に取り掛かります。

 

複数の作品が組み合わさった状態で展示されていますが、セットとして固定されているのではなく、組み替えることも可能、作品裏のサインが2辺に書かれているものもあるそうで、作品の向きもフレキシブルであることを意味しています。

 





作品の支持体はキャンバスやパネルなど。他の作品の支持体を使用して描かれた線や、くり抜かれた元の支持体を使用した作品もあります。

 

また、「色に高さがある」(Shoko Masunaga -  Statement より)と認識されている益永さんは、初めに10色の色を作ってからペイントされたそうです。クラフトテープや段ボールに錯覚するような色、壁に同化して作品がくり抜かれて見えるような白色の仕掛けも意図を感じます。

 

吹き抜けの高さを活かして積み上げられた1階の作品と、圧迫感を強調するために「積み、下げ」られた2階の作品は、互いに色や、支持体とモチーフの形がリンクしていることから、ともすれば重力が逆になったような感覚すら覚えます。

 





 

展覧会タイトル「replace」は交換、置き換えという意味です。ステートメントによると、物理的に置き換え可能な作品群であり、支持体とモチーフの入れ替わり現象や、微妙な色合いが配置によって異なって見える錯覚などを利用して動的な絵画を目指したと言います。

 

益永さんは冒頭にご紹介した「FACE UP」展が終わる際に「なんだか寂しい」という、通常の展示終了時とは違う質の寂しさを感じたそうです(shimaRTMISTLETOE 居心地の良い場所 より)。

 

商品の陳列に馴染む展示、名前がないようなぼんやりと濁った色彩、喫茶店で死角になるようなお気に入りの席、これらは置き換え可能で、共通の居心地の良さを感じると言及しています。アート作品は既存の概念に疑問を投げかけ新たな気づきを促すという本質から、違和感を感じる部分がより強調される傾向にあり、また鑑賞者もその違和感に集中します。通常の展示が、そのような違和を含むある種の居心地の悪さを感じる環境だとすれば、「FACE UP」展の、他の商品がフェイスアップ(正面を通路側にむけること)された日常的な空間に紛れ込んだ「だれも自分のことが見えていないのではないかと思える」状況が、居心地の良さをもたらし、終了時に通常とは違う質の寂しさを感じさせたと、知人の分析を引用して締めくくっています。

 

この「replace」展では、その経験からか、特定の作品、色彩に視点が定まることを避けるよう工夫されています。

 



私はこの一連の展示を拝見して、瞑想に似た心地よさを感じました。瞑想の一般的な手法は、身体の力を抜き、思考を停止することですが、成功すると自分自身が世界と一体化したような、境界がないような感覚になるといいます(その境地に達したことはありませんが、深いリラックスを感じることができます)。変性意識状態という状態です。

 

私たちが平面と言っているものにも厚みがあり、角があると思っているものも丸みがある。色の差も粒子まで拡大すれば違いが不明確になり、そもそも人間も物体も粒子レベルまで細かくすれば同じものなのではないか。少し飛躍した感想になりますが、「絵にオーラを感じる」という現象は、その絵が変性意識状態を引き起こしているからだという説があります。紛れるように、ただそこにある益永さんの作品は、建物の内にいながら外を想像させるような、1点を見ながら全体を把握するような、そのような感覚を与えてくれます。

 

展示がどのような特徴の場所で行われるのかというところから作品が考え出されている益永さんの展覧会は、配置を含めて没入型と言えるのではないでしょうか。思考を無にして、ぜひ体感してみてください。

 

 

展示風景画像:益永梢子 個展「replace」


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