· 

感想 石部巧 個展「ENCLOSURE」

 

石部巧 個展「ENCLOSURE」

 

 

会 期:2025年9月5日(金) - 9月17日(水) 

時 間:平日 16時-22時 土日祝 13時-19時

休 廊:会期中無休

場 所:亀戸アートセンター (KAC)

展覧会URL:

https://kac.amebaownd.com/posts/57272839?categoryIds=1764028

 


 

私がたびたび伺っている亀戸アートセンター (KAC) のオーナーである石部巧さんの個展に行ってきました。

 

石部さんは「塗る、刷る、切る、貼る、剥がす」といった工程を通して日本でよく見る家屋などをモチーフに作品を作っています。それはまるでDJがトラックメイクをしているかのようで、出来上がった作品からは音が聞こえてきそうなんですよね。

 

 

参考:過去の展覧会の感想記事👇

感想 石部巧 chappy 2人展 「Intentional failure」


 

 

 

本展では、石部さんが近年取り組んでいる「enclosure(囲い)」シリーズを中心に、豊富な過去作も合わせて展示されていました。

 

 

「enclosure(囲い)」シリーズ、かっこいいなぁ(ひとつ買いました⭐︎)。

 

どこかで見たことがあるような、、、たとえば、ドラマやアニメに登場する、メカなどを分析するコンピュータの画面のような印象です。スカウター越しに相手を見た時の画面、のような。

 

カラフルでエッジの効いた囲いの周りには、機械のモチーフやパーツ、線、文字などが絶妙なバランスで配置されています。一見、囲いの中に主題があるように見えますが、一方で外にもはみ出していくようなリズムが感じられます。

 

 

 

何かを囲う時、囲っている内側のものを見てくださいというメッセージがあることが多いですが、石部さんには囲いの外と内との関係はなんだろう?という問いが浮かんだそうです。作品を見る人がその問いも含め、自由に空想できるような仕掛けが散りばめられています。

 

☝️外からボールが入ってきた!的な。

 

 

 

画面にところどころ存在する怪しげな文字?も気になります。これはなんと「インレタ」を使っているそうです‼️

 

、、、って「インレタ」がなんのことがわかる人は私と同世代でしょうか。

 

インレタとはインスタントレタリングの略称で、印刷物に見られるゴシック体のような文字をへらや爪などで紙に転写するためのものです。ワープロやパソコン、もちろんテプラなども全く普及していなかった時代には、これを使ってカセットテープケースに入れる紙に曲名を一文字一文字こすりつけていたのです。

 

余談ですが、この作業をやっていた人たちは知らず知らずのうちにデザイン的な「文字間調節」ということを学んでいたといえるのかもしれません。昔の不便さってある面では英才教育だったりして。考えさせられます。そして、プリントからは得られないインレタ特有の濃さや物質そのものの質感は、けっこうかっこよかったんじゃないかと思うこのごろです。

 

インレタはこすりつけた部分しか転写されないので、文字を分解して転写することが可能です。石部さんはインレタを使ってSFに登場するような未来感ある文字?を作り出しています。これも作品を見る人の想像力をかき立てる仕掛けです。

 

上部に見えるグラフィティっぽいの線のようなものも、よーく見ると「は」の右側とか「に」「ろ」「ひ」「う」「し」「そ」・・・「ゲ」などインレタで描かれています。

 

インレタ以外にも、図などをトレーシングペーパーにコピーして貼りつけています。トレペの質感の馴染みがよいから、ということです。半透明の重なりがいい❗️

 

 

 

このように質感と、そしてなによりも構図にこだわりながら画面が作られています。そう聞くと、やはり音楽の作り方を連想してしまいます。音の素材を切ったり貼ったり加工したりして曲というバランスを整えていく、そんなイメージです。

 

 

 

ちょっと話が逸れますが、私は『おそ松さん』というアニメが好きです。『おそ松さん』は赤塚不二夫原作の『おそ松くん』の設定をそのまま借用していますが、異なる部分も多いです。六つ子は成人しニートと呼ばれ、地下アイドルやスマホの存在など環境も現代に即しています。先ほどインレタで世代の話をしましたが、私は80年代後半に放送されていた『おそ松くん』と、2015年から始まった『おそ松さん』と、両方をリアタイ視聴できた世代です。両方を楽しんで視聴した感想をいえば、設定を共有しているとはいえ全く別の作品で、両方ともおもしろい❗️

 

アニメも音楽も、原作が偉大なのはもちろんとして、リメイクやリミックスが最高、ということは多々ありますよね。

 

石部さんの作品を見ているとまさにそんなことが浮かんできます。昔のテクニカルイラストレーションやインレタ、見慣れた日本の家屋などが作家の手を通して現代の感性に鋭く訴えかけてくるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

考えてみれば、借用やリミックスって、過去に一つの作品として完成したものを外に開くことといえます。作品の輪郭としての囲いを完全に壊さずに開いていく作業です。

 

そう考えると、石部さんの囲いシリーズの枠の部分に隙があり、内と外の行き来が自由にできるように描かれているのは、リミックスを図解していると解釈してみてもおもしろいかもしれません。

 

 

 

亀戸アートセンター恒例のシルクスクリーンプリントサービスもあります👇 隙のある枠に注目。

 

 

 

音が聞こえてくるような作品って、良い❗️

おすすめの展示です。ぜひ足を運んでみてください。

 

 

 

 

 

展示風景画像:石部巧 個展「ENCLOSURE」, 亀戸アートセンター, 2025


本日のBGM

 

Wiley「Summertime」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

何かをサンプリングしている曲を選ぼうと思い、Daft Punkの「Aerodynamic」を使っているWileyの「Summertime」にしてみました。

9月なのにまだまだ暑い、、、!

サマタイム早く終わって、、、!!!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



関連記事