浅野克海 個展 「魂を震わすエネルギー」
会 期:2023年2月11日(土) - 2023年2月26日(日)
時 間:木金 15時-19時 土日 12時-19時 (最終日18時終了)
休 廊:月火水、2月23日(祝)
場 所:myheirloom
展覧会URL:https://www.myheirloom.info/exhibitions
うねうねと、それ自体が蠢いているようなヒモが集積して、人物の顔を形成している。
myheirloom にて浅野克海さんの個展「魂を震わすエネルギー」を拝見してきました。
浅野克海さんは名古屋芸術大学美術学部美術学科洋画2コース卒業、2023年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画研究分野卒業予定。描く対象を観察するうちに、その対象だけでなく万物にも流れるエネルギーに気づき、そのエネルギーの流れを表現することに取り組んでいます。
左:「執念と狂気の行 (インコンプリートマンと甘峰サクマ)」 右:「Instyle」
執念と狂気の行、、、細かく執拗に描き込まれた表現なので、タイトルがしっくりきます。もう一つの作品タイトル Instyle は雑誌の名前でもあります。雑誌の表紙のモデルが持つエネルギーを感じるという浅野さん。
「執念と狂気の行 (油彩筆菌と寒いですね。)」
( ) 内のサブタイトルの正確な意味は分からないけれども、菌という微生物の感じがぞわぞわと伝わってきます。描画そのもののエネルギーが、バンバン伝わってくる。
「We Love JEWERIES」
We Love JEWERIES というゴージャス感、、、というよりは人物の顔、目力の強さに引きつけられます。右下に展示されている混沌としたエネルギーのような一片と比べると明らかに異なる「気」の流れがあるようです。モデルのエネルギーと、文字も含めたレイアウトのエネルギーもあるのかな、と思いました。人物自体は、どこか、いにしえの時代の職人風に見えるのはなぜだろう、、、?
「エネルギー (爆砕弓) 」
人物のエネルギーに目がいく作品群とは対照的に、エネルギーそのものの表現に振り切った作品群も展示されています。エネルギーの感じ方の違いが味わえます。この作品のサブタイトルは爆砕弓。人の形も見出せるように思いますが、サブタイトルも考慮に入れると必殺技の感じがビンビン伝わってきます。
浅野さんはエネルギーについて、量子力学や「超ひも理論」を踏まえ、その循環から輪廻、そして少年バトルマンガについて言及されています。ある作品に出会って理屈なく感動することも、同じようなエネルギーの感受が起こっているのではないか、と考えさせられます。
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自分はドラゴンボールなどの少年バトルマンガが好きだ。
これらのマンガの最大の魅力は、主人公たちの熱く、魂が震えるような激しいバトルにつきる。
主人公たちがぶつかり合い、技を繰り出し合う、その姿に心が昂る。
そこに複雑な理屈などは、もはや要らない。
むしろ、如何にロジカルな思考を排除出来るかが、
凄まじいエネルギー 値を最大限に受容するための的確な姿勢だと考えている。
「魂が震えるほどの何かに触れること」それは、人間の最大の歓喜ではないだろうか。
そしてそれは、この世界を成り立たせる必須要素であり、人間という存在の核そのものなのだ。
(myheirloom 浅野克海 個展 「魂を震わすエネルギー」アーテイストステートメント より抜粋)
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理屈なく魂が震えるから、伝わるようにロジカルな説明を追求する。そういうことが作品鑑賞でも起こり得るので、感じることと考えることは両輪なのかも知れません。
語ろうとすると「考える」ことに偏りがちなので、「感じる」ことをもっと大切にしないとな、と思いました。
「TRIP」
誰、とハッキリは分からないけれど、「巨匠」感あります。
「SUMMER」
この作品にはなぜかホラー味を感じる、、、。
「エネルギー (爆砕突) 」
エネルギーの突。この「エネルギー」シリーズは描かれていないものを見出そうとしてしまう不思議な作品群です。
「WHAT TO WEAR NOW」
この作品はどこか牧歌的な雰囲気があります。ゴッホっぽさも感じる。エネルギーは必ずしも激しいものとは限らない。
左:「エネルギー (ナイトフラッシュ) 」 中:「style」 右:「エネルギー (ライジングパワー) 」
「2017年焼肉の旅」
この作品に描かれた人物はまさに少年マンガの主人公のような気がします。「GQ 2017年焼肉の旅」で検索すると該当雑誌の表紙画像がヒットするので、違いを見てみると面白いです。先ほどの「WHAT TO WEAR NOW」も該当の画像を検索出来ました。作品の印象がまた変わるような?
「エネルギー (爆砕刃) 」
「エネルギー」シリーズは半立体的な作品になっているため、支持体そのものが持つエネルギーにも意識的になります。影が加わることで、波状筆致のエネルギーが会場の空気を伝い、作品を観ている自分にも届いてくる感覚があります。
「MIX&MATCH」
左;「エネルギー (ラブスラッシュ)」
右:「エネルギー (クロスエナジー)」
エナジーヒューマン (インコンプリートマン)
「執念と狂気の行」の鉛筆画にも出てきたインコンプリートマンだ! 立体とエネルギーの組み合わせもすごく魅力的です。
厚く塗られた絵の具と波状筆致の集積を「エネルギーの技法」と名付け、その表現に向き合い続ける浅野さん。エネルギーが向かう先、魂を震わすモノ、という考えは、芸術作品が元来持っている「表現し難い何か」を明らかにする糸口であると思いました。視覚だけでなく、全身で感じ取ることが鑑賞には有効。言葉を尽くしても、実際に感じられたものには届かない部分がある。新しい観点から作品の核心に迫るような美術批評家は、同じ作品を時間をかけて何度も鑑賞していたりします。
エネルギーそのものの概念や、エネルギーを通して明らかになっていくものに考えが及ぶ展示でした。
ぜひ、足を運んでみてください。
展示風景画像:浅野克海 個展 「魂を震わすエネルギー」
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