九里藍人 石井佑果 伊藤夏実 関口美咲 グループ展「長文風速計」
会 期:2022年7月10日(日) - 2022年8月14日(日)
時 間:12時-19時 (金土20時終了)
休 廊:火
場 所:アキバタマビ21
展覧会URL:
http://www.akibatamabi21.com/exhibition/220406.htm
最近レビューする展覧会で販売されている作品の価格帯について、自分の制約がやや揺れがちですが、本展展示作品についても、会場のアキバタマビ21さんで販売しているのではなく、購入希望者を作家さんに繋いでくれるというシステムになっていることを、初めに明記しておきます。大作も多かったので、〜50万円に収まっていない作品もあると思いますが、小品もあったのでそれらは価格帯内であろうという予想で書いております。
この揺らぎは、レビューする展覧会を「自分が好き」という個人的な尺度で選んでいるため、価格帯の区切りが足枷になっちゃっているということに過ぎないのですが。でも、一番信頼できると思うのですよね 「自分が好き」っていう個人的な意見て。個人サイト万歳。
サイトの話はこれくらいにして、本展の感想に移りたいと思います。
会場のアキバタマビ21さんは多摩美術大学の運営による、原則40歳未満の多摩美術大学卒業生が企画代表者となり作家による自己プロデュースを基本としたグループ展を開催している場です (出品作家は多摩美術大学卒業生とは限りません) 。
本展は九里藍人さん、石井佑果さん、伊藤夏実さん、関口美咲さん4名のグループ展です。タイトルの「長文風速計」は九里藍人さんが考案した造語とのこと。「風速計」は風速を測る機械。風速○m という言葉には、台風のような自然の脅威から連想して、何かが瞬間的に持つ勢いを表すような印象があります。バズる、的な。「長文風速系」となると「長文」を打っている速度。このレビュー記事に当てはめて言えば、感想を表す言葉がつらつらつらーっと勢いづいて打ち込まれる様子を連想しました (実際に感想がつらつらつらーっと滑らかに出てくることは稀だったりします苦笑。理想です) 。
本展で鑑賞者が実際に対峙するのは「長文」ではなく作品なのですが、この「長文」が指し示す長さってどのくらいなのでしょうか? 並の文の長さでは表し切れない何かが脳内に流れ込んでくるような作品の印象があったのは確かです。
九里藍人 「じっ」
背中のあたりから何か出ている、、、。「じっ」と止まる何か。
九里藍人「犬12202018」
九里藍人「犬12202018」(部分拡大)
九里藍人「proportion」
プロポーションというタイトルだし、素直に形に注目しちゃう第一印象ですが、、、
九里藍人「no」
その昔、人体展で見たような、、、
九里藍人「no」(部分拡大)
九里藍人「ぷち」
ぷち、、、? 潰したの? 何かを。
九里藍人「みッ」
鳴き声を想像しました「みッ」。
奥に正面を向いた猫の顔が透けて見えます。
九里藍人「みッ」(部分拡大)
九里藍人「ハチ10152018」
複数のハチが確認出来ます。
九里藍人「てう」
「てう」は「ちょう」か。蝶か。朝、調、いろいろあります。文で考える前に、ふっと何かが頭に入ってくる感覚。違和感? 神秘? 説明できないけどいい絵ですね。好きだな。
かっこよ。
そしてこの、白黒の作品群の中にカラフルな一角が。
伊藤夏実「The world touches me, and I also touch the world.」
作品資料にはサイズ可変とあるので、これで一つの作品です。真ん中あたりに立つと、ここだけ異世界感があるというか。それはグループ展における各作家の作品の展示分けから感じるものだろう、と言われたらそうなのかも知れませんが、それも含めて展示方法としては成功しているのでは? とも思います。ここだけ、違う向きの風が吹く感じ。九里藍人さんの作品が、描かれた1つの対象に集中させる向きの風「>」だとしたら、伊藤夏実さんの作品は、個から世界へと向く「<」のベクトルを持っているような気がします。
拡がる感じ。
ショーウィンドウの中にも作品があるのですが、一旦、もう一つの展示室の様子をご紹介します。
九里藍人「タイトル不明」
ここの入口で初めに九里さんの「>」という、対象に集中していくベクトルが提示されますが、他の作家さんには違う風向きを感じました。その対比がテーマにあるのではないか、と仮説を立ててみる。キーワードは「風向き」です。
石井佑果「untitled」
おおう、世界が広がっているので個から世界へ、という「<」という向きを感じさせつつ、何か集中して観察してしまうものがある。
風向きを当てはめるとしたら「<>」でしょうか? 広がって、その後、集中する、というような。
伊藤夏実「Transmitter」
右下に写っている作品も含まれます。これらで一つの作品。トランスミッターは発信機、伝達者という意味があります。伊藤夏実さんは、やはり広がっていく「<」の向きか。
関口美咲「足のうらと足のうら」
おお。また新たな風向きが登場! 世界のような拡がり、というか外光も取り込むスケールの大きさなのにタイトルは「足のうらと足のうら」だと、、、?
左:関口美咲「カマキリNo.7」 右:関口美咲「カマキリNo.6」
こちらはカマキリ、、、だと?
関口美咲「空に膜をはる」
空に膜をはってクシャっとしたような形状。空に膜をはるって何? と、冷静になると疑問が浮かびますが、作品の見た目とタイトルはすんなり納得できる感覚がありました。空の感じがするし、膜をはったんだな、と分かる。そして広大な空を小さく折り畳んで部分にしても、空を感じる。察しの良い方はもうお分かりと思いますが、関口美咲さんの作品から感じた風向きは「><」です。きゅーっと集中していくことで全体を感じる、というベクトルです。
こじつけ感がある? いやいや、展覧会タイトルは「長文風速計」ですからね。風、関係あるでしょう。でも、風速って話だと、ひょっとしたら4者の風速は同じくらいかも知れないです。ぶわっと強めに感じる速度で、風向きの違いを意識するとめちゃくちゃ楽しめるのではないか、と思いました。
最後にショーウィンドウの中の作品をご紹介。
左:九里藍人「ジュウ」 右:石井佑果「untitled」
「>」と「<>」。
左:九里藍人「Stare」 右:伊藤夏実「Staring at eternal time」
「>」と「<」。
並べて観ると違いがよく分かる。
展覧会タイトルから考えた「風向き」というキーワードで観てきましたが、「いやいや、風速の違いも感じるよ!」という方もいるかも知れません。観る人の注意の向き方と作家の表す世界を風に例えて感じるという新しい視座を得ることが出来ました。どんな風を感じるか、ぜひ、足を運んでみてください。コメントもお待ちしております。
展示風景画像:九里藍人 石井佑果 伊藤夏実 関口美咲 グループ展「長文風速計」
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名無し推奨(管理人) (土曜日, 23 7月 2022 13:00)
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