架菜梨案(かなりあ) 個展「きらめく」
会 期:2022年1月21日(金) - 2022年2月5日(土)
時 間:10:30-18:30
休 廊:日月
場 所:ギャラリーアートもりもと
展覧会URL:
寺本明志さんの展示を観にBambinart Galleryに伺った際、架菜梨案(かなりあ)さんにお会いし、ご本人からご案内をいただきました。架菜梨案さんは1987年生まれ、多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻卒業、パリ国立高等美術学校修士課程修了、ポストディプロム取得。現在はパリを拠点に、フランス、日本で多くの個展、グループ展で作品を発表、Bambinart Gallery代表の米山馨さんもずっと展示をチェックされている作家さんだそうです。本展とほぼ同時期開催で大阪YOD Editionsでの展示「O花」(2022年1月28日まで) もあり、精力的に活動をされています。
展覧会DMのメイン画像は、透明のピンク色のレイヤーが円状にくり抜かれ、作品内の男女の抱き合う図がクローズアップされているものでした。初見では、ガーリーで可愛いイメージ。元JUDY AND MARYのYUKIさんのアルバムジャケットに使用しても違和感がない、というようなイメージでした。
しかし、本展に展示されていたのは、ガーリーという軽めの表現には決して収まりきらない、より本能に訴えかける官能的な、女性讃歌、生命讃歌とも言える作品の数々でした。
「四方位」
ギャラリーアートもりもとさんは2階。建物に入ってすぐの正面のウィンドウにも作品が。
入口ドアのガラス越しに見える作品もロマンティックです。この時はまだ官能的な作品とは予想もせず。
「Garden」
「ワニ乗り娘」
「集まり」
「集まり」 (部分拡大)
作品の表面には、まるで柔らかいクリームの表面を波打たせたような絵肌が見えます。そして鉛筆の跡に沿った凹みが。筆跡が出る多めの油絵具の上から、乾く前に色鉛筆などでひっかくという手法で描かれているそうです。ということは、描き直しができない、一発描きということでしょうか。
絵肌の繊細な模様と、クリームのような色、質感、女性の健康的な裸体に加えて、花や動物の配置、白く抜かれた部分など架菜梨案さんの技術とセンスが散りばめられています。
「集まり」 (部分拡大)
「集まり」 (部分拡大)
「Le monde a l'air lié mais séparé」
タイトルは翻訳ツールによると、「世界は繋がっているようで繋がっていない」という意味のようです。
「Le monde a l'air lié mais séparé」(部分拡大)
中央で抱き合っている、というか交わっている男女。後ろで動物が覗いている?上部のワニの口の当たりに、ピンク色の背景の帯の境が見えます。
「Le monde a l'air lié mais séparé」(部分拡大)
男女の頭上には交わるカタツムリ。蛇は2匹かと思いきや双頭の1匹ですね。
「Le monde a l'air lié mais séparé」(部分拡大)
画面右側には交わる男女の足が。背景にはオタマジャクシ?の群れ。
「DNA」
「DNA」(部分拡大)
DNAですねー。左にキノコ。右に桃。
「DNA」(部分拡大)
ねずちゃんかわいいね。
こういう、女性目線のエロというか、官能的なものって男性が観るとどういう感想になるのでしょう?
「DNA」(部分拡大)
蛇を巻き付けながら頭ぽりぽり、という感じになるんですかね。
「DNA」(部分拡大)
女性は「あら、DNAだわ!」とポジティブに言っているように見えます。
ビジュアルの第一印象でJUDY AND MARYを例として出しましたが、YUKIさんの書く女性視点の開放的な性の歌詞を熱烈に好きな男性もいます。人によるとは思うけど。男性だから女性だからですっぱり分かれるわけではなく、人による、というのが正しいのかな。
「羽根」
繊細な男性の表情。
「え、じゃあ、どうする?」
このタイトルと女性の表情。
「風吹く谷」
「風吹く谷」(部分拡大)
開放されている女性性。
「風吹く谷」(部分拡大)
「風吹く谷」(部分拡大)
「風吹く谷」(部分拡大)
チラ見。
「風吹く谷」(部分拡大)
そっぽ向いてる。
「準備はいい?」
「C'est la vie」
DMの画像の全貌はこちらでした。これぞ人生。
「伸びる」
「伸びる」(部分拡大)
何か新たな生命へと伸びていくような。
架菜梨案さんの作品の特徴は、人間を含めあらゆる生命体が画面の同じ階層に平等に位置しているところです。全てのものは深い部分では繋がっていると思う、とアートアイガさんのサイトに寄せたステートメントで言及しています。
性の純粋な喜びから、全ての生命体の対等な関係性まで及ぶ思考は、とても女性的であると思いました。女性視点であり女性主導の官能表現は、男性に対抗するものではなく男性讃歌でもあり、ポジティブなフェミニズムの表現であると思います。ジェンダーの問題では現状に不便を感じる方、つまり女性、がマイノリティの位置にあり、問題を具体的にわかりやすく提起する狙いで男性文化に対するカウンター的作品が多いこともあって、フェミニズム=男性への対抗と思われがちですが、本来は女性の解放であり、決して男性と競り合う思想ではないはずです。
「休憩」
この位置で休憩、笑。
「ハムスターの水槽」
架菜梨案さん自身のサイトには、大人のビデオのインタビューっぽいものもありまして、男性文化の引用も意識にありそうですが (あくまで私の推測です) 、そういう部分も含めて作品はユーモアに溢れ、自分の性別に対してもポジティブになれる展示でした。
色々な方の感想を聞いてみたいと思わせる展示です。ぜひ、足を運んでみてください。
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