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感想 高松明日香 個展「真昼の幻影」"A Ghostly Apparition at Midday"

 

高松明日香 個展

「真昼の幻影」

"A Ghostly Apparition at Midday"

 

会 期:2021年10月30日(土) - 11月13日(土) 

※オンライン展示は10月31日(日) 19時 - 11月20日(土) 

時 間:11時-17時

休 廊:月火

場 所:GALLERY エクリュの森

展覧会URL:

https://ecru-no-mori.jp/exhibition/高松明日香展_真昼の幻影


アートの中で最も原始的で魅力的なものは絵=ペインティングだと思います。ペインティングでは想像上の、ありえないものも描くことができます。

高松明日香さんのこの個展の画像をSNSで拝見し、「どうしても現物を見たい」と思い、静岡県の三島に行ってきました。

 

高松さんは1984年香川県生まれ、2007年に尾道市立大学芸術文化学部美術学科、2009年に尾道市立大学大学院美術研究科を卒業後、精力的に個展やグループ展で展示を行っていらっしゃいます。

 


 

 


 

 



 

 


 

 


 

 


 

 


 

まるで映画のような画面の連続。

 

2017年9月17日放送、NHKアートシーンでの「届かない場所 高松明日香展」(三鷹市美術ギャラリー)では高松さんの作品制作について、映画のワンシーンを写しとるところから始まると紹介されています。

 

以下は、本展示を観た私の、個人的な想像の物語です(鑑賞者それぞれ異なる受け取り方があると思いますので、妄想の一つとしてお付き合いいただけると幸いです)。

 

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物語はある若い小説家が古城を訪れるところから始まる。彼は長いこと神経症を患っており、筆がすすまないため、気分転換と療養を兼ねて主のいない古城を買い取った。城には小説家と歳の近い執事や従者たちが住んでいて、彼らとともに丘を散策したり、グライダーを飛ばしたりして、日々は順調に過ぎていくものと思われた。

 

ある雨の降りしきる日、一人の女占い師が古城を訪れる。彼女の専門は星読み。彼女は小説家に助言として何かを言い残し、去っていく。

 

その日以来、小説家の神経症は悪化の一途をたどる。彼は一日中ソファに伏せっていて、従者たちの励ましにも答えられない。彼の脳裏には白波がたつ海のイメージが繰り返し再生される。入水自殺を試みようと、何度も海へと向かうがどうしても果たせずにいた。ある日、海岸からそう遠くない場所に孤島があることに気づく。そこまでたどり着こうと泳ぐも、なぜか一定の距離までしか近づけない。そんな中、海岸線を一人の男が歩いてくる。彼は孤島から来たという画家であった。

 

城が入ったスノードーム。またはいくつもの古城のカット。古城は山間にあるのか海の近くにあるのか。あの占い師は本物だったのか。

 

画家との交流のうちに、小説家の調子は徐々に回復の兆しをみせる。小説家は画家に憧憬と尊敬の念を抱くが、彼が小説家のもとを去ることをうっすらと予感してもいた。

 

物語は画家が浜辺に座っているシーンで終わる。エンドロールでは子供や女性、古城での宴や、小説家や画家らしき人物も映し出されるが、その後どうなったのか明確には示されない。

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全体的にクラシカルな雰囲気にも関わらず、時代が特定できないようにBGMにはギターの歪んだ音を選びたいです。こんな妄想をさせるほどに、魅力的なペインティングの数々でした。

 

展示のレイアウトは高松さんご本人がされていて、壁の余白を含めて全体から醸し出される雰囲気が心地よく、映画を観たような、小説を読んだような気分になりました。台上の作品の絶妙なレイアウトも高松さんによるものだそうです。

 


 

紙に描かれた作品にはタイトルがありません。

 

会場ではサイレント鑑賞ワークショップが実施されていて、自分の好きな紙の作品を一点、そして課題作品としてギャラリーが指定している一点、あわせて二点のタイトルを考えて提出します。これは正解があるものではありません。ワークショップは、少しでも異なる角度から能動的に作品を見て欲しいという、エクリュの森代表の田村燿子さんの思いから、毎展覧会実施されているそうです。

おかげで、見落としていた細かい要素に気づくことができ、前述の妄想に繋がりました。

 

良い作品は想像力を掻き立ててくれます。

 

GALLERY エクリュの森ではオンライン展示も行っているそうですので、高松さんの作品にぜひアクセスしてみてください。

 

 

展示風景画像:高松明日香 個展「真昼の幻影」"A Ghostly Apparition at Midday"


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