八木恵梨 個展「LIFE, SAVE, AH~ #6」
会 期:2022年6月4日(土) - 2022年7月3日(日)
(土日祝のみ開廊)
時 間:12時-19時
休 廊:月-金
場 所:Token Art Center
展覧会URL:
http://token-artcenter.com/archive/16_yagi
八木恵梨さんは1994年生まれ、武蔵野美術大学造形学部油画科卒業、東京藝術大学大学院油画技法材料第一研究室修了、現在は東京藝術大学大学院博士課程油画技法材料第一研究室に在籍されています。
Token Art Centerさんのインスタグラムで拝見した作品「Headdress_diabram_LIFE, SAVE, AH~」の第一印象は、神話の中の人物みたい、というものでした。チャームが多くついたヘッドドレスもどこか「伝説の〇〇」と銘打ちたくなるようなアイテム感、RPGのゲーム感があります。この第一印象が、八木さんが表現する世界に遠からずリンクしている部分があったとは、この時点では思いもよらず。
「Headdress_diabram_LIFE, SAVE, AH~」
本展タイトル「LIFE, SAVE, AH~ #6」とあるように「LIFE, SAVE, AH~」シリーズの6回目の展示となります。「LIFE, SAVE, AH~」シリーズとは?
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近年継続して取り組んでいる「LIFE, SAVE, AH~」シリーズは、八木が泥酔した際に見た幻の男性、「ライフセイバー」をめぐる物語です。「ライフセイバー」のことが忘れられず、一方でただ一度幻で見たそれはとても曖昧な像であったため、当初は幻の男性を繰り返し描きその輪郭を探ったり、妄想的に発展させた物語を制作していました。そのことを継続するうちに八木の興味は、幻の男性からそれに執着する自分自身へと移行していきます。つまり特定のイメージに執着、依存する人間像への関心です。その頃から「ライフセイバー」にアプローチする女性(八木の別人格という設定)を「スイムキャップ」と名づけ、このシリーズは「ライフセイバー」と「スイムキャップ」、二人の関係性をめぐる物語へと発展していきます。
(Token Art Center 八木恵梨 個展「LIFE, SAVE, AH~ #6」」展覧会紹介 より抜粋)
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ぬぬぬ、、、「泥酔した際に見た幻の男性」? 一気に引き込まれますね! 面白い! どういうことなのだろう?
本展に際して八木さんのオーディオコメンタリーが3本公開されています。
プロローグとしてまず初めにこちらをどうぞ↓
Apple Podcast リンク
「Grave of GOOD GIRL (グッドガールの墓)」
GOOD GIRL には面白いエピソードが。後述します。
「UFO#2_LIFE, SAVE, AH~」
「Kiss_LIFE, SAVE, AH~」
「Arrow_LIFE, SAVE, AH~」
まるでタロットカードのように謎めいたモチーフたち。一見してすぐに「あー、こういう物語なのね」ってすぐ説明できる人は少ないと思います。しかし、脈絡がないものが並んでいるという感じでもなく、それぞれ描かれているものの象徴を辿っていけそうな雰囲気もビシバシ伝わってくる。タイトルの「Kiss」などはロマンチックさや「触れる」「繋がる」ことなどが思い浮かぶし、「Arrow」も「キューピッドの矢」だったり「破魔矢」のような魔除けの力を想像できます。
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例えば、「LIFE, SAVE, AH~ #4」で登場するモチーフ、チェーンブロックは八木が再び「ライフセイバー」を見たいと願い、当初幻を見た際の体勢(お姫様抱っこ)を再現するための器具として使用しているものであることから、「スイムキャップ」が「ライフセイバー」に焦がれていることの隠喩となっています。また同時に、それが身体が浮かせる装置であることから、重力ひいては社会規範からの解放、あるいは超能力なども象徴しています。
(Token Art Center 八木恵梨 個展「LIFE, SAVE, AH~ #6」」展覧会紹介 より抜粋)
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やはり、、、独自の象徴があるようですね。チェーンブロックとは「先端に荷物つり下げ用フックを備えたチェーンを鎖車に巻き掛けた簡便な物上げ装置 (コトバンク 百科事典マイペディアの解説)」のことです。
チェーンブロックやお姫様抱っこというキーワードを知ると、作品がまた違って見えてきます。
「Kiss_LIFE, SAVE, AH~」(部分拡大)
これはおそらく、お姫様抱っこされてる時の形状ですよね。左足の靴が脱げかけている。
「Kiss_LIFE, SAVE, AH~」(部分拡大)
こちらも左足に脱げそうな靴。何回も当時の状況を再現しようとしている様子なのかな。
「Kiss_LIFE, SAVE, AH~」(部分拡大)
中央に描かれている救命ブイ (浮き輪のような救命具) は他の作品で「UFO」と呼ばれています。
「UFO#2_LIFE, SAVE, AH~」(部分拡大)
「Kiss_LIFE, SAVE, AH~」(部分拡大)
ロマンチックな意味に取っていましたが、どちらも水を出す蛇口、流れることができずに溢れてしまっている。もう一度会いたい気持ちや「ライフセーバー」にまつわる妄想が溢れている、ギリギリの状態のようにも感じられます。
このカードが出たら、個人的に空回りしている危険な状態、警告の意味、ということですね (※私はタロット占い師ではありませんが)。
「Lifebuoy_LIFE, SAVE, AH~」
積み上がった救命ブイ。妄想に溺れている人を助けるもの、と捉えました。
「Lifebuoy_LIFE, SAVE, AH~」(部分拡大)
ここにも不思議なモチーフが。
描かれているものばかりに気が向いてしまいますが、製図用の鉛筆を用いた細い輪郭線や、水張りした水彩紙に均一に淡く塗られた水彩で構成された画面は、すごい描画技術だと思います。消しゴムの跡もない、滲み溜まりもありません。
八木さんのシンプルに削ぎ落とされた線は、テクニカルイラストレーションという技法を取り入れたもの。テクニカルイラストレーションとは、技術的な性質の情報を視覚的に伝達するイラストレーション (weblio辞書 より)のこと。電化製品の説明書などに載っているイラストを思い浮かべていただけると分かると思いますが、イラストの図だけで技術的な知識がない人にも分かるように描く技術のことです。八木さんがテクニカルイラストレーションを用いる理由は、自身の中にあるイメージの曖昧さを無くし、より鮮明にさせなければ描けない技法であるから。「ライフセーバー」やその他、八木さんの中のイメージにまつわる物語を鮮明にさせるためには必要なプロセスということです。
「My Captain Hook_LIFE, SAVE, AH~」
八木さんは過去に、フック船長が良い人側の勢力だったという夢を見たことがあるそうです。確かに、悪役と言えども愛されているキャラクターだし、勝者によって作られる歴史のことを考えると、そういう世界線もあるかもしれないな。
「UFO#1_LIFE, SAVE, AH~」
救命ブイが、草によって動けない状態になっている?草は多くの作品に描かれていて、重要な意味がありそう。
「puddle (水溜まり)」
「Sunset drawing on the dry land (乾いた土の上の夕日のドローイング)」
タイトルに「LIFE, SAVE, AH~」がついていないものは別ワールドなのか、と思いながらも関連性を探してしまう。「水」やビーチを思わせるサンセットのモチーフなど、海に関係していそうではある。
「Weight_LIFE, SAVE, AH~」
チェーンの先についたオモリ。想いが重い?
「Weight_LIFE, SAVE, AH~」(部分拡大)
描かれているマークが蜘蛛や、蛇、蝿などで、悪魔感があります。
「UFO#3_LIFE, SAVE, AH~」(部分拡大)
救命ブイを草から解き放つライフセーバーの図でしょうか?
UFOについては、別の世界からの来訪者ということから、何かの結界を超え得るもの、現実と幻視の境を超えるものと捉えてもいいかも。
八木さんの見た幻の世界に引きずられるように、こちらの妄想も全開になりますね。うーん、この感じ、、、何かアレを思い出す、、、。
展示は会場の2階へと続きます。
そして、書いていたらまさかのページ内コンテンツ超過により、本記事を前後編に分けることになりました!
「GOOD GIRL」とは? 「Lifebuoy_LIFE, SAVE, AH~」の不思議なモチーフは何なのか? 草の意味は? 私が思い出したアレとは、、、? 2階の展示で迫ります!
ちょっと煽り気味すみません。よろしくお願いします。
後編へ続く。
チラ見せ↓
「I AM A GOOD GIRL」
展示風景画像:八木恵梨 個展「LIFE, SAVE, AH~ #6」
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