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レビュー Hiraparr 個展「Good Neighbors」

 

Hiraparr 個展「Good Neighbors」

 

 

会 期:2022年6月11日(土) - 2022年6月26日(日)

時 間:12時-19時

休 廊:月火 

場 所:museum shop T

展覧会URL:

https://t-museumshop.com/2022/05/28/good-neighbors/

 


 

Hiraparrさんの作品にはSNSでたどり着きました。具体的に何がきっかけだったかは失念してしまいましたが、音楽やファッションと関わりが深く、同じ多摩美術大学だったY.I.M.のオミールさんに頼まれて描いたと言うアルバムジャケットのアートワークがきっかけとなり、思い出野郎Aチーム、JAZZYSPORTとtoeのコラボTシャツなど、その後も様々なアルバムジャケット、アパレルグッズ等を手がけていらっしゃいます。絵を描くことは小さい頃からされていたそうですが、多摩美術大学では芸術学部という学芸員やキュレーターを輩出する学部所属だったHiraparrさん。学部では誰に見せるわけでもなくノートなどに絵を描いていたのに、それでもアルバムのジャケットを頼まれてしまうなんて。そのエピソードが示すように、一度見たら何だかとても気になってしまう独特の空気感や世界観のある作品が特徴です。

(参考HP:THE MAGAZINE ヒラパー・ウィルソン インタビュー | グローバルに活躍する画家/ブリコルールの原点とクリエイティビティ)

 

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本タイトルのGood Neighborは直訳すると“良き隣人”という意味です。驚くべき速さでグローバル化が進むなか、より身近な“良き隣人”の存在がより大切になってきている気がします。

 

Good Neighborとは単に人間だけに使う表現ではなく、妖精など目に見えない霊的な存在を“Good Neighbor=良き隣人”と英語で表現します。

 

今回の個展は2020年頃から制作している、日常では目視することのできない細菌やウィルスなどミクロな存在を描いたPOWDERシリーズを中心に、新たに霊的な存在をより感覚的に制作した水彩画や陶器などを展示します。

 

また“Good Neighbor”は在日アメリカ軍が、基地周辺の地元市民に対して、自分たちを表現した言葉でもありました。横田基地の隣町(東京都昭島市)で育ち無意識のうちに多大な影響を受けているであろう自身のルーツと、今も影響を受けている目に見えない存在“Good Neighbor”を感じて、楽しんでいただけたら幸いです。

 

(ステートメントより全文)

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「powder#01.GN」

POWDERシリーズは、セメント、石膏、粘土、漆喰などが使用され、物理的にも立体なのですが、彩色も立体的に施されていて、何とも不思議な違和感があります。写真だと伝わり切らず申し訳ないです。

 

「powder#01.GN」(部分拡大)

例えば「ハウスダストがこんなに!」などCMで見せられる特殊な映像って自然界ではあまり見ないコントラストですよね。この作品群も色のコントラストが妙で、そのイメージもあって、普段目に見えないものが見えている感じがとてもします。


 

「陶器」

何だろう? か、かわいいぞ、、、。

DUB→

 

「陶器」(別角度で撮影)

→IT UP

ダビングの妖精?


 

「untitled」

 

「untitled」(別角度より撮影)


こちらも何とも言えない不思議な感じ。影が赤い? 微生物を顕微鏡で見たら骸骨が笑っていた、というような。私には、中央のお花 (に見えるもの) 2つが目で、ツバのある帽子を被った骸骨の顔に見えます。

 

「ecolasia」

泣いている、、、?

 

「untitled」

デビル? 悪魔? 感がありますが、どこか楽しい雰囲気も。


 

そしてこの、不思議でかわいい者たち。

 

タイトルはすべて「陶器」

 

「陶器」

目が合うと連れて帰りたくなってしまう、、、。危険です。


 

「陶器」裏 (一部の作品のみ)

ギャラリーの方が教えてくださったのですが、作品によっては、このようにターンテーブルの軸にはめてくるくる回しながら鑑賞できる仕様になっているのだとか。素敵! 音楽と関係が深いHiraparrさんならでは、という感じがします。

 

「陶器」

どの作品がターンテーブル仕様になっているかはギャラリーの方にお声かけして、見せてもらうことをおすすめします。

右の作品のように、下の方に薄い台のようなものが見えるモノがヒントでしょうか?


 

「陶器」の作品はまだまだ、たくさん続きます。

 

タイトルはすべて「陶器」

 

「陶器」


 

「陶器」

妖精、妖怪、動物、植物、細菌、ウィルス等、見る人によって様々なモノに捉えることができる。

 

「untitled」

作品が飾られていた位置もあって、これは鳥に見えました。


 

左:「Good neighbors01」 右:「Good neighbors02」

この2作品には、人々? 微生物? 精霊のようなものが所狭しと隣り合っています。登場しているモノたちの数も多いのに、どこか調和が取れている。

 

なるほど、本展のテーマの「よき隣人」のことが少し見えてきた気がしました。

 

 

 

絵や作品のことで言えば、色の組み合わせ、モチーフの組み合わせ、作品同士の組み合わせなど、隣り合うものの関係性で良し悪しが変わってくる。今まで本展で見てきた「陶器」の作品も、大きさや色など、隣にどの作品があるか、その隣同士の関係により、複数個をそのまま連れて帰りたくなるような魅力がありました。

 

2020年からの新型コロナウィルスの混乱と、2022年に起きた武力行使による世界情勢の不安は一見、共通項のない、別の問題であると思っていましたが、他人と気軽に触れ合うことができなくなったコロナ禍での暮らしや、ウィルスと共に生きる道を探ろうとする「ウィズコロナ」というスローガン、隣合う国家との関係性、在日アメリカ軍のことなど、「Good Neighbors」という1つのキーワードに当てはめて捉えることもできます。それ以外にも、妖怪や見えざる者をテーマにした漫画やアニメ作品の流行や、地球全体の未来を視野に入れたSDGsも「Good Neighbors」「よき隣人」で語ることが出来そうです。

 

他者との関係性は全ての事象において普遍のテーマであるとしても、隣人にとって「Good」「よき」という状態であることについて、以前よりもはるかに個人個人が意識している現状ではないでしょうか。本展のテーマはなかなかにすごいものがあります。

 

「花瓶」

 

「花瓶」(別角度で撮影)


この「花瓶」もよく見るとクッキーやクリップ、おもちゃ、虫、骸骨などが組み合わさっていて、かわいいけど、呪術的な雰囲気もあります。薄い青で塗られている部分が顔に見えるようになっていて、生きているようです。花瓶に生気があるのに、花はドライフラワー。髪の毛っぽい。いい組み合わせだなぁ。

 

「powder#02.GN」

 

「powder#04.GN」


 

「powder#03.GN」

 

「powder#03.GN」(部分拡大)


うーん、本当に写真に撮った画像では不思議な感じが伝わりにくいので惜しいですが、このPOWDERシリーズも、立体的なマチエールに立体的に描かれた色の組み合わせで目の錯覚のような現象が引き起こされているわけで、隣同士の関係というのは本当に色々な可能性を秘めている、と感じました。

 

「powder#05.GN」

 

「powder#06.GN」


 

「powder#05.GN」(部分拡大)

 

「powder#05.GN」(部分拡大)


 

「powder#06.GN」(部分拡大)

 

「powder#06.GN」(部分拡大)


 

「Good Neighbors」という普遍のテーマに困難な近年を振り返りながらも、作品からはHiraparrさんが関わってきた音楽やファッションの要素を感じられて、どこか陽気で楽しい気分になりました。

 

 

 

人間の暮らしの傍らには気分の上がる音楽やファッションもあって、そういった文化の地続きに視覚的な芸術作品もある。それらは本当によき隣人であり、自分も誰かのよき隣人であるために傍らに置くもの。

 

何度も繰り返してしまいますが、今回ばかりは本当に画像では伝わり切らない、肉眼で観てこその不可思議さがあります。ぜひ、足を運んでみてください。

 

 

 

展示風景画像:Hiraparr 個展「Good Neighbors」


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