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感想 TENGU 個展「The Light Never Suffered (苦しみのない光)」

フランシスコ・エルネスト・カレロ・ベニテズ 

TENGU 個展

「The Light Never Suffered (苦しみのない光)」

 

会 期:2022年5月18日(水) - 2022年5月29日(日)

時 間:水-金 12時-19時30分 土日 12時-18時

   (最終日17時終了)

休 廊:月火 

場 所:Gallery TK2

展覧会URL:https://www.interart7.com/フランシスコベニテズーthelightneversuffered


フランシスコ・エルネスト・カレロ・ベニテズさんは1986年生まれ、スペイン出身、2010年に初来日。2015年に動画クリエイターとしてYouTubeチャンネルNekojitablogを開始、同チャンネルは登録者数300万人という人気チャンネルです。ストリートスナップ写真を撮り始めたのは2016年、ストリートスナップに関するYouTubeチャンネルTENGUを2017年に開始、こちらも2022年5月現在チャンネル登録者数7万人を超える人気があり、ベニテズさんはTENGUさんと呼ばれています。

 

TENGUさんのストリートスナップには人を惹きつける魅力があります。光と影のバランス、絵画に通じる構図という美的な魅力もさることながら、どこかユーモアや悲哀といった人間らしさも感じさせます。SNSで見たオカダキサラさんの作品がTENGUさんの理想とするストリートスナップであったため、2021年に同Gallery TK2で開催されていたオカダキサラさんの個展「©TOKYO to KYO too」に来廊したそうです。その時、TENGUさんの作品をギャラリー代表の小林さんに見せたことがきっかけとなり、今回のオカダキサラさん個展「TOKY∞VER」と同時期に個展を開催する運びとなりました。肖像権やプライバシーの問題でストリートスナップが撮りにくくなった昨今においても、ストリートスナップの本質を捉えている作家の一人としてTENGUさんを挙げることができると思います。

 

 

「最終的なさようなら (The Last Goodbye)」

ちょっと面白い場面かと思って目に留まったんですが、タイトルは切なくて悲しい。

 

「心の支え (Emotional Support)」

何があったんだろう? とても辛そうだけど、ちょっとだけ滑稽に見えてしまう。


 

「後ろと反対 (Reverse)」

一瞬ドキッとしますよね、妖怪? え? 顔無い? 後ろ姿でしたー。

 

「手相 (Read My Hand)」

彫刻作品かと思う程、特徴的な2つの手。右手前:手相見てたんかい。左奥:背中は掻きますよね、痒いから。光の端っこを捕まえてるみたい。


 

「一歩一歩 (Step by Step)」

日陰の中、二本に分かれた光と、裾捌きも揃った二人の足並み。新しい季節を連れて来そうです。

 

「会話 (Conversations)」

奥にも大きく映った二人が見えます。手前の曇りガラスでぼやけた二人と、ぶら下がっている金のオブジェと、金の額縁のような縁取り、全部合わせて何となくシュルレアリスム絵画っぽい。


 


本展タイトル「The Light Never Suffered」は、TENGUさんが影響を受けた写真家Alex Webbの作品集のタイトル『The Suffering Of Light』から、賞賛と尊敬を込めてつけられました。

 

『The Suffering Of Light』をインターネットで拝見しましたが、光と影のコントラスト、構図の捉え方がとても魅力的な作品群でした。TENGUさんの作品もまた、光と影 (闇)  が相互によい影響を与え合っている一瞬を切り取ったものが多くみられます。

 

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人々が見ることができる色彩は光と闇の相互作用のおかげだ。 写真を撮り始めた当初からモノクロではなくカラーで撮るのは、人々が直接見ている色彩の世界を自分の目で感じとり、一枚の写真に収めたいからだ。 世界が光だけであったら写真を撮ることが出来ないし、影だけでも写真が撮れないだろう。 光と影のダイナミックな一瞬を撮りたい。

 

(作家ステートメントより抜粋)

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上:「都市の自然 (Urban Nature)」

下:「雲と雲の出会い (Cloud Meets Cloud)」

 

上:「ねないこだれだ (Dont't want to go to bed ?)」

下:「現代生活の形 (Shapes of Mordern Life)」


 

「到着 (Arrival)」

 

「皆んなはあなたのために働く (People work for you)」


 

「影のぶつかり (Shadows collide)」

 

「待つ (The Wait)」


 

在廊されていたご本人にお話を伺うことができました。本展に展示されている作品はだいたい2018年から2022年にかけて、銀座や浅草などで撮影されたものだそうです。初めは渋谷にも出向いてみたそうですが、人が多過ぎてあまりよい写真が撮れなかったとのこと。

 

撮り溜めたものを時系列ではなく一度ばらけさせ、共通点がみられる作品を隣り合わせるなど再編集して展示しています。

 

左:「交差した人生 (Crossed Lives)」 右:「満開 (In Bloom)」

上の2作品は全く別の作品ですが、横に並べると白い壁に映った木の影が繋がっているように見える、と教えてもらいました。本当だ!「交差した人生 (Crossed Lives)」の二人の人物と「満開 (In Bloom)」の一人の人物とその影の頭の位置関係も似てます。日陰部分が広く画面を占めるという共通点もあります。

 

TENGUさんはストリートを撮ることについて、目の前にある奇跡のような一瞬を誰も見ていない、その一瞬を捉えたい、ということをおっしゃっていました。

 

「人生の負担 (Burden of a Life)」

こちらの作品もほんの一瞬、1秒あるかないかの時間をものにした1枚。人物が角を曲がったよくあるシーンで、意識しなければ誰も注目しない風景です。画面の左右に規則的に現れた縦の線 (展示物?と窓枠) や、中央の線 = 建物の角で区切られた陰の部分と光の当たる部分の境界、右上から建物内部に斜めに入った影と人物の後ろに流れるように入った三角形の影など、対称的な背景を移動する人物という奇跡的な構図。少し前屈みな姿勢と力なく振られた腕に、つけられたタイトルも秀逸です。

 

TENGUさんのストリートスナップからは、美的な魅力やユーモア、悲哀を感じると言いましたが、それはより大きな視点で捉えると、世界礼賛、人間礼賛なのではないかと思いました。特別な場所に行って奇跡を待って撮った風景ではなく、誰もが見ている目の前の世界にこそ奇跡が潜んでいる。しかも無限に。そんなことを教えてもらえた気分です。特別な場所にわざわざ行かなくても、近所を散歩して光と影を感じてみよう、そんな気持ちにさせてくれました。見よ、世界はこんなにも美しく、人間はこんなにも素晴らしかった!

 

紹介しきれていない他の作品もとても魅力的でした。TENGUさんのインスタグラムも要チェックです。ぜひ、足を運んでみてください。

 

 

 

展示風景画像:フランシスコ・エルネスト・カレロ・ベニテズ (TENGU) 個展「The Light Never Suffered (苦しみのない光)」


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