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感想 ragelow solo exhibition "POWER"

 

レイジロウ 個展 「POWER」

ragelow solo exhibition "POWER"

 

会 期:2022年4月9日(土) - 2022年4月17日(日)

時 間:13時-19時

休 廊:月火

場 所:SORTone

展覧会URL:https://www.instagram.com/p/Cb7hoC-v11G/

 


 

2021年12月に下北沢 reload にて開催された絵本出版記念展「DAYOFF」に続いて、神宮前のSORToneにてレイジロウさんの個展「POWER」が開催されました。

 

2021年12月絵本出版記念展「DAYOFF」のレビューはこちら

 

前回の展示からのレイジロウさんの大きな変化として、都心から離れた場所に古民家を借り、制作活動をしたり、大家さんと交流したり、土間をいじったりなどされているそうです。その環境の影響が伺える作品も本展「POWER」にありました。

 






 

 

はじめに目に留まったのは空を描いたシリーズです。

 

「POWER 1」

 

以前から空を描くこともあったそうですが、新天地での日々で感じた空はまた違ったものに見えたのではないでしょうか。この「POWER 1」という作品を描いてから、空のシリーズが始まり、空想上の建造物もだんだんと変化していったようです。蛍光オレンジの差し色や、最後に引くという飛行機雲のような線 (「POWER 1」以外の作品に見られる) を描く時が気持ちいい、とおっしゃっていました。

 

「POWER 2 BALOON」

鳥、見えますか。

 

「POWER 2 BALOON」(部分拡大)


 

「POWER 3 TIME」

 

「POWER 3 TIME」(部分拡大)

ここにも鳥。微妙にゾロ目じゃない時刻が気になる。キリの良い数字から一つ進んだ、始まった!みたいな?


 

「POWER 7 SQUARE」

 

「POWER 9 SQUARE」


 

HIDDEN CHAMPION #64 に掲載されているインタビューでは「土間の雑巾がけをしている時にそれをマーカーに見立てて、太いラインを描く練習をしたり (HIDDEN CHAMPION  Issue - #64 「Ragelow」より抜粋 )」と話されています。何となく、空の表現に雑巾掛けの跡を重ねてしまいます。

 

「DAY AFTER 1」

 

「DAY AFTER 1」(部分拡大)


 

「DAY AFTER 2」

 

「DAY AFTER 2」 (部分拡大)


 

「DAY AFTER 3」

 

「DAY AFTER 3」 (部分拡大)


 

「THINK OUTSIDE THE SYSTEM」

 

「THINK OUTSIDE THE SYSTEM」(部分拡大)

 

レイジロウさんには宮崎駿の世界観はやっぱり凄い、という思いがあるとのこと。「DAY AFTER」の作品群からは「天空の城ラピュタ」のようなロマンを感じます。人間が作ったものが長い年月を経て自然と共存していくうちに独特の形状になるような。それでいて未来的な建造物の部分もあったりして。いにしえの伝説と最新鋭テクノロジーが融合した世界を冒険しているようなワクワクした気分になります。レイジロウさんも、自身のロマンチックな部分が出た、と言っていました。

 

くろちゃんとぽわわにも変化が。

 

左から:

「DAY OFF DRINK TIME 1」

「DAY OFF DRINK TIME 2」

「DAY OFF DRINK TIME 3」

 

「DAY OFF DRINK TIME 1」

 

「DAY OFF DRINK TIME 2」


 

「DAY OFF DRINK TIME 3」


 

この画面いっぱいのポートレイトのような作品群は、背景の色を塗った後にマスキングして線や面を切り抜いてステンシルのようにペイントするという方法を採っているそうです。平滑な表面、より平面的な印象になっています。くろちゃんとぽわわの、キャラクターとしての形、動作の表現そのものにより注目できるような作りですね。

 


左から:

「DAY OFF POWER」

「DAY OFF LIFE」

「DAY OFF KILL TIME」

 

「DAY OFF POWER」 (部分拡大)

こちらの作品群に見られるような細かい輪郭線は一発描きとのこと、すごいです (白い部分、蛍光オレンジ部分はマスキング&切り抜き方式) 。

 

「DAY OFF KILL TIME」(部分拡大)

下部のタイトル部分は手描き。手描きか、マスキングして切り抜きか、という選択もさりげなく行っているそうですが、レイジロウさんの中で自然に「わかっている」ものがある、という印象を受けました。それを人はセンスと呼ぶ。


 

会場にはほとんどを手描きで仕上げたくろちゃんとぽわわ作品もあるので、印象の差を比較して観れるのも興味深いですね。

 

「DELIVERY VAN」

 

「DELIVERY VAN」(部分拡大)


 

会場であるSORToneさんとHIDDEN CHAMPIONさんのコラボレーション・プロジェクト「HIDDEN WALL」という企画にレイジロウさんがフィーチャーされています。「HIDDEN WALL」は、「SORTone」屋外右側壁と左隣の「Bar FORT」の上部にミューラルアート (壁画) を3ヶ月ごとに設置し、街の景観を彩るという企画です。

 

「Bar FORT」上部。


「Bar FORT」上部。


 

「SORTone」屋外右側壁。


「SORTone」屋外右側壁 (部分拡大)。


 

HIDDEN CHAMPIONさんは前述のレイジロウさんインタビューもされており、インタビュー掲載の「HIDDEN CHAMPION  Issue - #64」も会場にあるのでぜひゲットしてください (フリーマガジンなので早い者勝ち。某タ○レコ渋谷店では配布終了していました。手に入ってよかったー) 。


 

 

そして、残念ながら会期は終了してしまったのですが、レイジロウさんがくろちゃんを生み出すきっかけを作ったナンバさんという方が企画されているもう一つの展示会が西麻布のCALM & PUNK GALLERYで開催されていました。ナンバさんはMARKER STUDIOを運営、不定期で展示などを行ったり、瀬戸内海の犬島で毎年夏に「INUSHIMA FES XXXX THE JAMBOREE」を開催するなどされてきた方で、レイジロウさんに犬島での滞在&作品制作を提案した人物です。レイジロウさんは信号機もコンビニもない環境で廃材を利用して小屋を作ったりするうちに、黒猫のお母さんと仔猫に出会います。それがくろちゃんの始まりでした。

 

そんなレイジロウさんと長年のお付き合いのあるナンバさんの企画展「+-土 ~黒い土こそ生命の源~」は、福岡を拠点とする金澤バイオ研究所の土が軸となっています。金澤バイオ研究所は土壌微生物を用いて生分解を得意とする研究所で、分解できる衣服への取り組みについてJAXAと共同研究をされるなど、これからの社会に必須となる、とても重要な活動をされている研究所です。展示会場には、ナンバさんが土で描いた抽象画からはじまり、レイジロウさんの作品や、GRAND COBRAさんによる鉄の作品、Haruhito Factoryさんのデニムなど、サステナブルな主題が展開されていました。この土の可能性について当サイトでは詳細に解説しきれず申し訳ないのですが、そういったちょっと難しそうな主題も視覚的に受け取ってもらえるというアートの効用が感じられて、とても有意義な展示でした。

 

展示風景画像:「+-土 ~黒い土こそ生命の源~」

 

土が抽象画のような模様をつくる、ナンバさんの作品。


 

レイジロウさんの小屋とGRAND COBRAさんの鉄の作品、手前のケースはナンバさんの作品。

 

GRAND COBRAさんの作品は雷のように見えますね。レイジロウさんペイントの鉢も販売されていました。


 

展示風景画像:「+-土 ~黒い土こそ生命の源~」

 

最新鋭テクノロジーを駆使して自然と共存するというテーマにレイジロウさんの新作が合致しています。


 

 

精力的に活動されている印象のレイジロウさんですが、古くからの友人や新天地での大家さんとの心温まるやりとりを大切にされていて、そうして自身が生きていくことと制作活動を同じ次元で進行されているのが伝わってくる展示でした。来場者にも気さくに話しかけてくれます。ぜひ、足を運んでみてください。

 

 

 

 

展示風景画像:

ragelow solo exhibition "POWER"

企画展「+-土 ~黒い土こそ生命の源~」


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