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山口由葉 個展「四角い宇宙」
会 期:2021年12月11日(土) - 2022年1月16日(日)
時 間:13:00-19:00
休 廊:月火、年末年始(12/27 - 1/7)
場 所:TAKU SOMETANI GALLERY
山口由葉さんは1992年生まれ。名古屋造形大学造形学科造形学部洋画コース卒業、名古屋造形大学大学院造形研究科修士課程造形専攻、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画、修了。個展やグループ展で作品を多く発表されています。
今回の展覧会では、作品についてのステイトメント等はなく、山口さんが自身の作品について「四角い宇宙」と言い表している、とのことでした。展示作品数が4点と絞られた会場のTAKU SOMETANI GALLERYでも、山口さんが表現する世界をじっくり堪能できる空間になっています (作品リストには他の作品も掲載されており、ご希望の方は見ることができます) 。
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「一色の海と映る私/I reflect on the sea of Isshiki Town」
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「ガスドーム/Gas dome」
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=328x10000:format=jpg/path/s62453297738ff6ff/image/i9c2ee58a67410dd4/version/1641550833/image.jpg)
「橋から見た川/River seen from the bridge」
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=328x10000:format=jpg/path/s62453297738ff6ff/image/ib84bc0325cf8398c/version/1641550837/image.jpg)
「高速道路の下/Under the highway」
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=328x10000:format=jpg/path/s62453297738ff6ff/image/if355024bd6895a21/version/1641550841/image.jpg)
「宇宙」という言葉には「その人が認識している、その人だけが持っている世界」という印象があります。山口さんの宇宙とはどのようなものでしょうか? 会場には作品ファイルもあり、山口さん本人の文章も載っていて、作品を深く知るきっかけになりました。
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わたしはバスに乗ってアトリエに行く
わたしは普段乗っているバスの中で流れていく風景をドローイングする。
見ては覚え描く、そして描こうとしたとき忘れていく。
忘れてしまって手が止まった ときにそのドローイングは完成する。
アトリエでドローイングはタブローを描くときの記憶のとっかかりとなる。
タブローを描き進めていくとドローイングは役目を終える。
役目を終えたドローイングは メモとして残り、
タブローはわたしとのやりとりの時間の中で変化していく。
わたしがあなた (対象) と関わって日常を見ること、覚えていること、描くこと、
すべてが関係し合って1枚の絵ができた。
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作品に特徴的に現れている線のストロークは、バスで移動している時の流れる空気を表しているとも見えますし、記憶の中で映像が巻き戻された時のノイズのようにも見えます。
「ガスドーム/Gas dome」部分拡大
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「高速道路の下/Under the highway」部分拡大
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山口さんの絵の魅力は、具象と抽象という、実在している世界と、ひょっとしたら山口さんにしか見えていない色や線とが、とても心地よく混ざり合っているというところだと思います。
「橋から見た川/River seen from the bridge」部分拡大
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=328x10000:format=jpg/path/s62453297738ff6ff/image/ib9b486912de600d4/version/1641550857/image.jpg)
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「高速道路の下/Under the highway」部分拡大
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=328x10000:format=jpg/path/s62453297738ff6ff/image/icb4d0d453f2f9cc7/version/1641550862/image.jpg)
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山口さんの立ち位置は、作品である絵から距離を置いたものでなく、一体化しているというか、自ら絵の中に混ざりにいっているような印象を受けました。自身が見たもの、という記憶を絵に混ぜることで、その時の感情というような、可視化できないものを可視化する作業に思えます。
山口さんと作品の関係性は、前述の作品ファイルの他の文章にも綴られていました。
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私と小石 絵と私
中学校の頃、私はいじめが原因の不登校児であった。
暴言を吐かれたり、笑い者にされ、空気のように無視されたりすることが常であった。
息をすることが罪であるかのように感じていた。
そしてそう思い込むことが、もしかしたら許されるかもしれないという最後の希望であった。
だんだん自分が本当に存在しているのかわからなくなった。
その日は珍しく学校に行った。
帰り道、私は1人であった。
気がつくと私のつま先に小石が当たり、ころころ転がった。
そのとき私は、はっとして大きく息をした。
そして自分の存在を知らされ、安堵した。
生きていることに静かで小さな喜びを感じた。
描く絵と私は、私と小石の関係でありたい。
絵にぶつかった私がころころ転がって、描いた絵は、はっと大きく息をする。
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自分が意図せず蹴ってしまった小石で、自分の存在を意識したという山口さん。山口さんが絵にぶつかってころころ転がることにより、絵それ自体がその存在を知ることになる。そういう関係でありたいと山口さんは述べています。
存在している物が存在していると意識している世界、それが宇宙ということなのかもしれません。
「一色の海と映る私/I reflect on the sea of Isshiki Town」部分拡大
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山口さんの作品に触れて、偶然蹴られた小石のように心が転がる人は多いと思います。その時初めてその絵はその人にとっての絵になる。
じっくり1点1点と向き合える展覧会と思います。ぜひ、足を運んでみてください。
展示風景画像:山口由葉 個展「四角い宇宙」
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