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感想 unpis solo exhibition "DISCOVER"

 

unpis solo exhibition "DISCOVER"

 

会 期:2021年11月16日(火) - 11月21日(日) 

時 間:火-土 12時-20時  日 12時-17時 

休 廊:月

場 所:ギャラリールモンド

展覧会URL:

https://www.instagram.com/p/CWUeJVcvgp9/


 

イラストとアートの違いってなんでしょう?

イラストレーターとアーティストの違いは?

 

イラストを描く人がイラストレーターでアートを造る人がアーティスト。ですが、イラストの原画はアート作品と見做されるとこも多いと思います。その場合、描いた人はアーティストになりますね。今年、たまたま訪れた美容室が90年代後半のファッション雑誌をストックしていて、懐かしがりながら読ませていただいたところ、見つけた特集記事が「ファッション、音楽、アートの世界をかけぬける イラストレーションの最先端」。奈良美智さん、五木田智央さん、落合多武さん、リタ・アッカーマンさん、マーク・ゴンザレスさん、エリザベス・ペイトンさん等の名前が「イラストっぽく楽しめる少しポップなアート作品」として誌面に並んでいました。

 

どっちがいいとか、どちらが上かという話ではありません。アーティストと呼ばれることに抵抗があったり、自分はアーティストと思っていないと言うアーティストさんもいらっしゃいます。結局、肩書きというのは外野が決めることのようです。何だか申し訳ないですが。

 

unpis(ウンピス)さんは武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業後、デザイン事務所、日用品メーカー勤務を経て2020年9月にイラストレーターとして独立、『ファッションイラストレーション・ファイル2020』(玄光社)の装画、IKEA、ルミネ、OUTDOOR、私の大好きなファッション雑誌『LaLa Begin』(世界文化社)内の記事にもイラストを提供されています。イラストは日常で絶対エンカウントしてますね。友人の一言がきっかけでSNSに作品を投稿しはじめたのが2017年の6月頃というのですから、すごいスピードです。

 

私がunpisさんの作品を意識したのは、2021年10月、VOU /棒(京都)で開催された個展「ユルす」の展示風景画像をSNSで拝見した時でした。京都には伺うことができなかったのですが、思わず京都在住の友人に知らせていました。今回の東京での展示は初の作品集『DISCOVER』(グラフィック社)の出版を記念して開催され、新作20点を観ることができました。

 

 

「DISCOVER」

左:「INSIDE」

右:「STEPS」


左:「WHO」

右:「HATE」

 

「EMPTY」


左:「FRAY」

右:「TOUCH」

左:「MISSING」

右:「TELEPORT」


 

「PIECE」

左:「MELT」

右:「FLOW」


 

「FICTION」

左:「POUR」

右:「REFLECTION」


左:「FIGURE」

右:「REST」

左:「MY FACES」

右:「COVER」


 シンプルで親しみやすい絵柄ですが、他者との関わり方や自分自身の認識についてというテーマが感じられる、示唆に富んだ作品だと思いました。「FRAY」「FICTION」など、ちょっとドキっとしませんか。

 

この少し怖いような表現は、作品を特徴付けるものとして意識的に前面に押し出されているものと思っていました。日常でエンカウントしていたはずのunpisさんのイラストにはない特徴だからです。それがどうやら違っていたので2度目のドキっ、です。この度出版される作品集『DISCOVER』にはインタビューが掲載されており、それによると

 

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作品はちょっと毒があると言われることもあるのですが、自分自身はブラックユーモアみたいなものがあまり得意ではなくて。痛みや寂しさのような感情を描くときでもネガティブな印象にならないよう気をつけています。(『DISCOVER』(グラフィック社 2021年)unpis INTERVIEWより)

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とのことなのです。薄めて、受け取られやすくした結果なのですね。イラストとアートの違いがここにもありました。イラストはステートメントもコンセプトも(あったとしても)まず読まれません。イラストのみで伝えることが使命です。鑑賞者が嫌な思いをしないような配慮もなされている。逆説的ではありますが、unpisさんの作品ではその配慮もあって、主題の受け取り方の幅を確保しており、よりアート作品らしい作品となっているということでしょうか。

 

 

作品を順に観ていくと「COVER」という作品で終わり、始めの「DISCOVER」へと繋がっていきます。

 

「COVER」

 

「DISCOVER」


 

カバーが取り払われても、見ることができるのはガラスや水に映る自分だけ。自己を客観視し、初めて自分を発見する。unpisさんご自身は、基本的にはアーティストではなくイラストレーターに軸足を置いておきたい、と表明されていますが、外野である私はこのようなパーソナルな作品を今後も楽しみにしております。

 

 


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